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販売すると「即完売」の人気バッグを手掛ける85歳のおじいさん。さらに、外国人を魅了する「バイクツアー」を運営する70歳の元CA。笑顔を生み、自らも笑顔で生きるイキイキ“幸”齢者たちを追跡しました。
■「美しき日本」をバイクで案内
東北道を走る大型バイクの集団。1200ccのハーレーダビッドソンを巧みに操り、外国人ライダーたちを先導するのは松林由紀子さん(70)。
外国人観光客向けに、バイクで日本を案内するツアーを運営しています。
松林さん:「この渓谷は、ドラゴンのようにクネクネ曲がっているの」
外国人:「なるほど」「ドラゴンの形なのか」
得意の英語で、全国をガイドしてまわる松林さん。実は、キャリア36年を誇る元・国際線の客室乗務員。1カ月に1組のペースで、外国人を“おもてなし”しています。
オーストラリア人観光客:「会えてうれしいよ」
松林さん:「やっと会えたわね」
オーストラリア人観光客:「美しい田舎の景色を見たいと思って、日本へ来たんだ」「バイクなら走って止まって、走って止まって、気ままに旅と景色を満喫できると思ったんだ」
お客さんによって、希望する旅の目的は様々です。
松林さんは、事前に入念な準備をしていました。メールでのやりとりを重ね、相手の好みをくみ取りプランを立てます。
提案したのは、朝、東京を出発し、富士山の5合目を経由、箱根の名所を眺めながら走り、静岡県・伊東の温泉旅館に宿泊するプラン。
だったのですが、参加者から、こんな追加のリクエストがありました。
松林さん:「『黒たまごを食べたい』と」
箱根・大涌谷の名物である「黒たまご」をぜひ食べたいとの声が…。
箱根の大涌谷に立ち寄るとなると、熱海あたりで日が暮れ、初めて日本の道を走る外国人には危険ではないかという懸念が…。
そこで松林さんはルートを走り、下見することにしました。
お客の要望に応えつつ、スケジュールに無理がないか、自らの目と足で確認するのが大事だといいます。
それによって、思わぬ発見もあります。
松林さん:「晴れていたら、富士山もキレイに見えるんですよね」
開放感のある大パノラマに、富士山の絶景を望めるスポットを偶然発見。観光バスもほとんど立ち寄らない穴場でした。
「美しい日本」を海外の人に伝えたい…。客室乗務員を早期退職後の10年前、趣味のバイクで旅していた時、思い立ったのだとか。
松林さん:「日本はキレイなところいっぱいあるなと再確認したので。今まで培ってきた英語を使った外国人の方へのおもてなしをひらめきました」
200キロを優にこえる大型バイクを操るため、週に3日のジム通いで体力作りは欠かしません。
オーストラリア人観光客:「フフー」
初めて日本に来たオーストラリア人のグループに、満足してもらえるのでしょうか?
しかし出だしから、下見とは異なる事態に…。富士山の5合目に到着すると、濃い霧で山頂がよく見えない状態でした。
まさに、雲行きの怪しいスタートでしたが、シャッターを切ったタイミングで、見事に霧が晴れ、山頂の見える写真に!
オーストラリア人観光客:「私たちラッキーよ!」
昼食後、上機嫌で向かったのは、急きょルートに追加した大涌谷。それにしてもなぜ「黒たまご」にこだわりがあったのでしょうか?
オーストラリア人観光客:「7年寿命が伸びるのよ」「7年間健康でいられるわ」
ひとつ食べれば「寿命が7年延びる」と、海外のサイトで紹介されていたのだとか。
オーストラリア人観光客:「ベリーナイス」「ブラックエッグ」
そして、松林さんが見せたかった“あの場所”に到着しました。
オーストラリア人観光客:「ここに連れてきてもらって、本当にうれしい。じゃなきゃこの景色は見られなかった」「素晴らしい。本当に素晴らしいわ」
松林さん:「自分が来て良かったと思う場所を同じように喜んでくださるのがうれしい」
自分も感動しながら、世界を感動させたい。松林さんの第2の人生は、走り出したばかりです。
■「即完売」の人気…85歳のバッグ職人
名古屋にお住まいの山田あいさん。今、彼女をトリコにしているのが、このカラフルなバッグです。
山田さん:「大きいんですよ、中がすごく。ものがたくさん入るというか。ポケットもたくさんあって使いやすい」
月に一度オンライン販売をすれば、瞬く間に完売する人気のバッグです。
「G3sewing(ジーサンソーイング)」。その名の通り「おじいさん」が作っているのです。
三重県四日市市の齋藤勝さん(85)。妻の陽子さん(81)と、娘の千里さん(51)夫婦も手伝い、家族で経営。
千里さん:「こんな年になって、両親を介護するんじゃなくて、両親と仕事するなんて。80代ですよ、2人とも。ホントに感謝です」
毎月、およそ150個のバッグや財布を一点一点手作りする、売れっ子職人です。
勝さん:「こんなことになるとは想像もつかなかった。なんか夢の中を泳いでいるみたいな気がする」
実は勝さん、3年前まではミシンに触れたこともないどころか…大病を患い、ほぼ寝たきりの生活を送っていたというのです。
■ファンも興奮…「ドキドキ」舞台裏
毎月150個が「即完売」。女性に大人気のバッグを手掛ける齋藤勝さん(85)。
勝さん:「売れると思わなかった。自分は面白いから、やっていただけ」
勝さんは45年以上、電気製品の修理を手がけていた元・電気技術者で、初めてミシンに触れたのは、わずか3年前。
そこには、今のお元気な姿からは想像できない、意外な理由がありました…。
勝さん:「(当時の)自分は死にたいだけ。うつ病にもなっていた」
電気技術者を引退後、大腸の病気や糖尿病を相次いで患い、ほとんど寝たきりの生活だったという勝さん。
それを見かねた娘の千里さんが持ちかけたのが、壊れたミシンの修理でした。
千里さん:「(電気)職人の気持ちがちょっとでもスイッチが入ったら良いなと思って」
ミシンを修理し、試しに布を走らせたその時、勝さんに転機が訪れたのだといいます。
勝さん:「これやりたいな。次のモノやりたいなと思って。もう取りつかれた、ミシンに」
ミシンで布をぬう感触のトリコになってしまったのです。
勝さん:「電気屋しとった時でも、親父が技術あっても教えてくれなかった。見て覚えろということで。なんでもバラしてみる、そういうクセがついているもんで」
元々、手先が器用な勝さん。職人魂に火がつき、独学でみるみるうちにレベルアップ。
そんな勝さんの手作りバッグを孫の元希さん(22)が、SNSにアップしたことで思いがけない事態に…!
なんと「バッグを買いたい」とのメッセージが、およそ800件も寄せられたのです。
あまりの人気に、地元の住民も巻き込むことに。バッグの裏地作りを手伝ってもらっているのです。
勝さん:「みなさんの力で、僕らもできている」
堀越葉満さん(92):「92歳です。これがあると生きているかいがあるような感じがして」
こうして、月に完成させるバッグは、およそ150個。
千里さん:「売れるといいね。祈っとってね」
勝さん:「見てられない、見てられない。へへへ。ドキドキするな」
月に一度の販売日は、どんなに人気になっても、毎回緊張するといいます。
その一方で、「G3バッグ」の大ファンである山田あいさんも、ドキドキでこの日を迎えていました。
山田さん:「絶対買いたいので、気持ちをこう、精神統一です」
販売開始10分前から、正座して構える山田さん。毎回、夫の真也さんも駆り出されるのだとか。
それでも購入できないことも少なくないといいます。
あいさん:「開かない、まだ開かない」
真也さん:「あ~ダメだ」
あいさん:「ん~8時だけど、つながらない」
やはり購入希望者が殺到している様子。すると…。
あいさん:「できた、できた、できた、できた、できた。ヨシッ、ヨシッ、ヨシッ、ヨシッ!買えた、買えた、ヨシッ。ヨシッ、いけた~」
真也さん:「良かった~。こっちダメだ」
結果、販売開始から15分ほどで、ほとんどのアイテムが完売する人気ぶり。
勝さん:「うれしいね。みんなの努力のたまものやね」
千里さん:「感謝やね」
勝さん:「ホントに感謝やね」
笑顔をもたらし、自らも笑顔で過ごす「幸齢者」新しいことを始めるのに、遅すぎるなんてないのかもしれません。
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