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難民政策は「日本モデル」を手本にする…ドイツで悪魔扱いされている極右政党の支持率が倍増しているワケ|ニフティニュース


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■結党10年で「支持政党2位」に浮上

ドイツ大手調査会社のInsaが7月29日に発表した政局トレンドによれば、極右政党のAfD(ドイツのための選択肢)の躍進が止まらない。前回2021年9月の総選挙の時は得票率が10.3%だった同党だが、現在の支持率は20.2%とほぼ倍増。第1位は、野党第1党のCDU/CSU(キリスト教民主/社会同盟)で26.8%だが、AfDがすでに2位である。しかも、AfDはまだまだ伸びる可能性が大だ。

それに対し、現行の連立政権をみると、社民党、緑の党、自民党の支持率はそれぞれ18.5%、14.4%、6.7%で極度に不振。3党合わせても40%に届かない。ドイツはすでに不況に突入しており、食料品の値はあがったままだし、国民の多くは先行きに不安を感じている。

つまり、支持率の低下は、政府に対する国民の信頼が完全に崩れ始めた証拠といっても過言ではない。

■メルケル政権の「難民ようこそ政策」に反対

AfDは2013年の金融危機の時、EUのユーロ政策に反対した経済学者らが作った党だ。その後、指導者メンバーの入れ替わりもあったが、現在、基本にあるのは、ドイツという国家の国益の尊重で、文化や伝統を大切にした直接民主主義の実践。つまり、EUや国連に奪われている主権を国民の手に取り戻そうということだ。15年の難民騒動の時には、メルケル首相の「難民ようこそ政策」を鋭く批判し、国民の琴線に触れた。

ただ、すでにその頃より、すべての政党とすべての主要メディアがAfDを、存在してはいけない党として激しく弾劾し始めた。以来、メディアは今日まで、同党の真っ当な主張は一切取り上げず、一部のネガティブなところだけを抜き出して大々的にキャンペーンするという、いわゆる偏向報道を繰り返している。そして今、AfDが伸びるに従って、その偏向報道がさらに激しさを増している。

つまり、AfDはどれだけ伸びようが、CDU/CSUがAfDと連立し、ドイツに確固とした保守政権を立てるなどというシナリオはあり得ない。それどころか、実は、AfDの台頭に一番危機感を覚えているのが、自称保守のCDUなのである。

■脱炭素はすでに絵に描いた餅と化しているが…

CDUはこれまでAfDを極右だ、ネオナチだと決めつけ、絶対に連立はしないと公言してきた上、実は、あまりにも左傾してしまっており、今やAfDと組める状態ではない。そこでCDUは、政権を取るなら緑の党が連立相手として必要になると見越し、必死で緑の党に擦り寄っている始末だ。

その緑の党だが、現在、極端に支持を失いつつある政権党3党の中で、なぜか他の2党ほど沈下してはおらず、総選挙時の14.8%が若干下がった程度だ。ただ、実は、ドイツの国益を一番損ねているのが緑の党で、例えば、エネルギー危機の真っ最中に、全方面からの反対を無視してすべての原発を止めてしまうという暴挙に及んだのもこの党だった。

現政権内で分不相応な勢力を奮っている理由も、やはり、社民党も連立相手として緑の党を必要としていることだろう。

その緑の党のおかげで、今、ドイツは電気不足に陥り、連日、外国から高い電気を買い、止めるはずだった石炭と褐炭の発電所まで稼働中だ(何が“脱炭素”なのだか?)。今は夏なので電気消費が少なく、日中は太陽光発電に助けられてどうにかなっているが、今冬の電気供給については何ら保証されていない。

■AfDが不満の受け皿になっている

それにもかかわらず緑の党は、電気がなくても国民にガソリン車からEVへの乗り換えや、暖房の電化を強いるという支離滅裂さ。そして、すでに絵に描いた餅と化した“脱炭素の達成”を、未だに聖なる目標として掲げ、それが実現すればドイツに好況が訪れると嘯(うそぶ)いている。

ただ実際には、産業用電気料金は高止まりのままだし、CO2の排出量に伴う炭素税まで課され、景気は良くなるはずもない。当然の帰結として、競争力を失った産業界が先を争って国外に脱出を図り始めており、雇用が総崩れになることが危惧されている。

しかし、緑の党のコアな支持者というのは、都会に住む裕福なエリート層とその2世、しかも教員や公務員が多く、経済的困窮とは無縁だ。だから、今なおイデオロギー優先で凝り固まっていられる。

したがって緑の党の支持率もそれほど落ちないのだが、ただ、そういう一部のエリートたちに支えられた政党が強権的な政策を強行するのだから、今や国民の多くは、自分たちは犠牲者だと感じている。緑の党の対極にあり、現実的な政策を提唱し続けていたAfDがどんどん支持者を増やし始めたのは、当然の結果である。

■支持者は村八分にされ、政治番組にも出られない

AfDは当初、旧東独地域に確固たる地盤を築いた。旧東独の人たちは、40年間、独裁党のプロパガンダに晒(さら)されていただけあって、中央の政治家や主要メディアが声高に主張することに対しては特に懐疑的だ。だから、現行の、AfDに対する反民主主義、反人道主義、極右という非難にもあまり動じない。

主要メディアや中央の政治家は、そういう旧東独の住民を、知性や民主主義の不足している人たちのように論(あげつら)い(彼らは元々旧東独の住民をバカにしている)、多くの一般国民も、AfDが何を主張しているかも知らないままに、周りにいるAfD支持者を村八分にする。

ちなみにAfDは、テレビの政治トークショーに呼ばれることがほとんどなく、稀に呼ばれれば、司会者と出演者全員から総攻撃を受けた。そして、そのせいで番組がトークショーの姿を留めなくなると、それさえもAfDのせいにされたのである。

それでもAfDはじわじわと実力を蓄え、今やその台頭は旧東独の局地的現象ではなくなっている。連邦議会はもちろん、今では、シュレスヴィヒ=ホルシュタイン州を除くすべての州議会に議席を有しており、すでに国民政党といった感すらある。

■ドイツはネオナチ台頭国家になっている?

それを嫌った政府は、AfDに極右政党の疑いをかけ、AfDは現在、憲法擁護庁(国内の諜報(ちょうほう)活動に従事)の監視下に置かれている。しかし、有権者の5人に1人がAfDの支持者である今、AfDが極右政党なら、ドイツはもはやネオナチ台頭国家である。政府は本当にこれを叩き潰せると思っているのだろうか。

今年の6月、7月には、旧東独のザクセン=アンハルト州とチューリンゲン州の自治体で、立て続けにAfDの首長が誕生した。結党以来、今まで、AfDの党員が「長」と名の付く役職に就くことはついぞなかったのは、そうなりそうなところでは、他のすべての党が主張などかなぐり捨てて連帯したためだ。

つまり、AfDが「長」の座を勝ち取るには単独過半数を取るしかなかったが、今、それが小さな自治体とはいえ、実際に起こり始めたわけだ。

■野党第一党が連携を示唆したとたん大騒ぎに

さて、前述のように、この状況で苦悩しているのが、メルケル首相の引退後、先の総選挙で鼻の差で社民党に負けたCDUだ。当初は連立交渉で政権を保とうとしたものの、緑の党に振られ、野党に転落。党首のメルツ氏は現在、メルケル前首相が思い切り左傾化させたCDUを、再び保守党に戻すことを目標に掲げている。

メルツ党首とメルケル前首相は、20年来の宿敵ともいえる険悪な仲なので、メルツ氏にとっては、前首相の痕跡を消すためにも、党の方向転換は大いに成功させたいところである。ところが、蓋を開けてみたら、すでに多くのCDUの政治家は緑の党と意を一にしており、これで果たしてCDUが保守に回帰できるのかは大いに疑問だ。

そのメルツ氏が7月の終わりに、インタビューで突然、「民主主義の選挙で選ばれた政治家とは力を合わせていかなければならない」という趣旨のことを言った。これはつまり、新しく選出されたAfDの首長らとの共同作業を意味するのだが、そのとたん、ドイツの政界は大騒ぎ。メルツ氏は、まるで悪魔と協定を結ぼうとしたかのように激しい非難に晒された。

しかし、氏の言っていることはそれほど間違っているだろうか。民主主義国ドイツにおいて公認されている党の議員が、普通選挙によって首長の座を勝ち取ったなら、それを認めるのが民主主義だ。そうでなければ、選挙民である自治体の住民の権利はどうなるのか。

■CDUの混乱をよそに、欧州議会選へ

また、現実問題として、CDUはそろそろAfDと組める体制を構築しておかなければ、未来がなくなる。このままでは、これから続くいくつかの州選挙でも、25年の総選挙でも、CDUは再び社民党と緑の党の左派連合に弾き出される可能性が高くなる。

ただ、まずかったのは、メルツ氏はその少し前に、AfDの拡大を防ぐための「防火壁」を構築しなければならないと提言し、この言葉が炎上していたことだ。つまり、「防火壁」と、AfDとの共闘の勧めが矛盾してしまい、その揚げ足を取られて大騒ぎになった。

さらに氏はなんとその翌日に、今度は、「AfDとの連立を意味したわけではない」と、またもや前言を翻した。結局、この二転三転の無様さが仇となり、今や世間では、氏の政治生命の終了まで口の端に上り始めている。あたかもメルケル前首相の呪いのようだ。

こうしてCDUがギクシャクしている間に、AfDの全国党大会が7月28日、マクデブルクで開かれた。それに加え、29日、30日、さらに8月4〜6日と、2度に分けて、来年6月のEUの欧州議会選挙に焦点を当てた大集会が開催された。

■移民政策は「“日本モデル”を手本にすべし」

結党10年で絶好調のAfDが、欧州議会にかける期待は大きい。EUでは従来より保守政党が政権を握っているハンガリーやポーランドだけでなく、イタリア、スウェーデン、オーストリアなどにも次々と右派の政権が成立しているため、ドイツ国内とは違って、AfDが異端として差別されることも少ない。AfDは当初、EU脱退を主張していたが、現在はEUの改革をモットーに掲げ、少なくとも35人の候補者を立てる予定だ。

ちなみにAfDは欧州議会では、フランスの国民連合や、イタリアのLega、オーストリアのFPÖなどと共に、ID(アイデンティティーと民主主義)という右派の会派に属している。

目下のところAfDは、EUでもドイツでも、与党になる気満々なので、その政策案は外交から安全保障、財政、教育、エネルギー政策など、すべての分野を包括しており、内容もしっかりした現実的なものになっている。

例えばウクライナ戦争に関しては、ロシアへの経済制裁はドイツの弱体化に資するだけなので一刻も早く終了し、対話による停戦を積極的に進めるべきだという主張だ。確かに、ロシアを敵に回したヨーロッパの平和や繁栄などあり得ないと思える。

なお、私にとって意外だったのは、日本が難民受け入れを制限しているとして、“日本モデル”を手本にすべしと言っていることだ。これについては、少々買い被りではないかと感じられて仕方がないが……。

■ドイツの前途は荒れ模様である

7月30日には、憲法擁護庁のハルデンヴァンク長官が、AfDが「極右の陰謀論を拡散しようとしている」と指摘する一幕もあった。ドイツには昨今、政府を批判する意見は何でも「陰謀」とする傾向があるので、「またか」という感は否めない。

さて、今後のことである。よほど大きく躓(つまづ)かない限り、AfDが来年の欧州議会選挙で成功を収めることは想定内だ。もし、そこで“異端”の看板が外れれば、25年のドイツの総選挙の行方もかなり流動的になるだろう。

ただ、AfD以外の政党は、現在、すべて没落の一途なので、このままでは、手負いの獣同様、AfD攻撃が何でもアリになっていく可能性は否定できない。それこそさまざまな「陰謀」が蔓延るかもしれない。

いずれにせよ、AfDを駆逐しようとする勢力と、支持する勢力の対立が、ますます熾烈(しれつ)になっていくことだけは間違いがない。ドイツの前途は極めて荒れ模様である。

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川口 マーン 惠美(かわぐち・マーン・えみ)
作家
日本大学芸術学部音楽学科卒業。1985年、ドイツのシュトゥットガルト国立音楽大学大学院ピアノ科修了。ライプツィヒ在住。1990年、『フセイン独裁下のイラクで暮らして』(草思社)を上梓、その鋭い批判精神が高く評価される。2013年『住んでみたドイツ 8勝2敗で日本の勝ち』、2014年『住んでみたヨーロッパ9勝1敗で日本の勝ち』(ともに講談社+α新書)がベストセラーに。『ドイツの脱原発がよくわかる本』(草思社)が、2016年、第36回エネルギーフォーラム賞の普及啓発賞、2018年、『復興の日本人論』(グッドブックス)が同賞特別賞を受賞。その他、『そして、ドイツは理想を見失った』(角川新書)、『移民・難民』(グッドブックス)、『世界「新」経済戦争 なぜ自動車の覇権争いを知れば未来がわかるのか』(KADOKAWA)、『メルケル 仮面の裏側』(PHP新書)など著書多数。新著に『無邪気な日本人よ、白昼夢から目覚めよ』 (ワック)、『左傾化するSDGs先進国ドイツで今、何が起こっているか』(ビジネス社)がある。
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(作家 川口 マーン 惠美)

]...以下引用元参照
引用元:https://news.nifty.com//article/magazine/12179-2494166/

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