[
2023年6月10日、歌手であり、警察官であるキャット・アーティティヤーさんが投稿した写真を巡って、SNSやニュースで話題となり、日系のニュースサイトでも報じられた。投稿は削除されたが、同時に謝罪に追い込まれる事態となっている。しかし、その批判は憶測と思い込みに基づく根拠の無いもの。それがひとり歩きしてしまう現代社会の怖さを現している。
キャット・アーティティヤーさんはタイのルークトゥン(歌謡曲)歌手としてデビューしたのち、その美貌を活かして、数々の美人コンテストに挑戦。今年もミス・タイランドのチョンブリー大会で優勝した。話題となった投稿は彼女本人のFacebookに投稿されたもので、警察官として警察大尉のポストに昇進したことを両親に感謝するものだった。
その投稿を巡って、タイのネットが炎上した。それは彼女が警察官となって、たった3年で警察大尉にまで昇進したのは、おかしいというものだった。以前からタイでは、お金持ちが優遇される社会構造が問題視されている。今回の件も、まるで彼女自身が裕福な家系出身であり、その境遇を利用して出世できたように批判が集中した。また、他のニュースでは過去のスピード出世をした事例を特集する記事も現れた。
しかし、キャットさん本人はタイでも中流家庭の出身だ。親戚に警察官の叔父さんがいる程度。実は、わたしは彼女がデビュー間もない頃にコンサートやイベントで何度もあったことがあり、私が主催したタイの子ども支援チャリティーコンサートにも参加してもらったこともある。彼女自身は、その頃も向上心に溢れ、小さなイベントやギャラが安いコンサートでも積極的に参加する姿勢に大いに好感を持っていた。そして時間のある時には「報徳堂(ポーテクトゥン)」と呼ばれるボランティア救急サービスにも参加している。また、ご両親にも会って話したこともあるが、非常に丁寧で礼儀正しく、「娘を応援してやってください。」と頭を下げられたことを覚えている。
今でも歌手としては無名だが、プロモーターとしても活動しており、有名歌手と契約して地方での大きなコンサートをブッキングしている。また多くの美人コンテストに参加。数年前にはミス・ブリーラムに選出され、今年はミス・チョンブリーの栄冠を勝ち取っている。かつてタイの美人コンテスト、特に地方でのコンテストは、地元有力者の身内などが優遇されたり、枕営業などの話が多くでていたが、現代においてはそれも減ってきている。
また、日本人を含む外国人に多い間違いとして、警察官が仕事を掛け持ちすることを疑問視する向きもあるが、タイでは公務員の兼業は禁止されていない。むしろ少ない給料の穴埋めとして、アルバイトなどを奨励している。そのため警察官がゴールドショップ(金製品の店)などでガードマンをしている姿は多く見られる。さらに歌手や有名人を広告塔として採用することも、昔からよく行われており、警察官が歌手であったことは珍しいことではない。それは軍でも同様で、かつて軍に所属したことがある有名歌手は、今でも時々軍服をきて広報活動に参加している。
このようにタイ人でも憶測と思い込みで炎上してしまう事態だったことから、日系のニュースサイトが、それをそのまま報じてしまうことも仕方がないのかも知れない。しかし、何も検証を行わずに勝手な思い込みで考察を記事に書くのはいかがなものだろうか。サイト独自の見解や解説などを書くのであれば、しっかりとした裏取りをするべきと考える。わたし自身、タイに住んで20年以上になるが、今でもわからないことや驚かされることが少なくない。一つのニュースから憶測するだけなら、記事に書くべきではないだろうと考える。
【執筆:そむちゃい吉田】
]...以下引用元参照
引用元:https://news.nifty.com//article/world/worldall/12137-2385452/