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事故が起きた10日後、北海道警察の水中カメラが『KAZU 1』をとらえました。
船体に沿って進むと、入口の天井が破損しているようです。開け放たれたドアの中は客室でした。椅子は大きく傾いて、座面が外れたものもあり、衝撃の大きさがわかります。取り残された乗客がいないか、客室内を重点的に捜索していると、黒っぽいリュックサックが見つかりました。
行く手を阻まれながらも、少しずつ船の前方へ。客室の前にある窓が見えてきました。茶色い窓枠の3枚のうち、真ん中の窓のガラスが割れています。
『KAZU 1』が引き上げられたとき、真ん中の窓と船内に通じるハッチには、板のようなものがはめられていました。ハッチの方は、金具がぽっきりと折れ、なくなっていたのです。
国の運輸安全委員会の調査では、ハッチのふたが外れて、窓を直撃。そこから海水が船内に流れ込んだことが、沈没の一因とされています。
次は、操舵室に向かいます。船の周辺もくまなく探しましたが、行方不明者は見つかりません。
再生を始めて約50分後。カメラが何かに引っかかり、動かなくなったところで、映像はおしまいです。
この映像は、事故の約2カ月後から、一部の乗客家族にのみ、公開されてきました。
水中カメラがとらえた黒っぽいリュックは、小柳宝大さん(当時34)のものでした。
小柳さんは、いまも行方がわからない6人のうちの1人。仕事で駐在していたカンボジアから一時帰国中に事故に巻き込まれました。
事故から約1カ月後、リュックは、中に入っていた持ち物とともに、家族の元へ戻ってきています。
小柳宝大さんの父親(65)
「もう返って来たときは、これに抱き着きました。中を見るのも悲しくて、1人では見られない。誰かが一緒にいないと悲しくて辛くて見られない」
沈没事故から、2年と5カ月が経ちました。
小柳宝大さんの父親(65)
「お骨のひとかけらも見つからない。いつまで、こういう気持ちかなと思います」
専門家に映像を分析してもらったところ、見えてきたのは、沈没に至る衝撃の大きさです。
水難学会・安倍淳理事
「沈没するときに、中に海水が一気に流れ込んで、中で渦になって、さまざまな椅子がその場になくて、浮くものはその場になくて、重いバックは席の下にそのまま」
事故のあと、知床では、利用客の回復が見込めないとして、廃業した観光船の事業者もいます。
海上保安庁は、運航会社『知床遊覧船』の桂田精一社長について、業務上過失致死の疑いで捜査を進めていますが、立件にはいたっていません。
乗客の家族らは、今年7月、桂田社長などを相手取り、約15億円の損害賠償を求める訴えを起こしています。
小柳宝大さんの父親(65)
「(Q.桂田社長に対しては)変わらないですね。きちんと謝罪もしないで逃げ隠れしている。許す気持ちには、いまもならない」
今回の水中映像は、事故直後に、北海道テレビが開示請求をしたものの、当初、北海道警察は非開示を決定しました。不服申し立てを経て、ようやく映像が開示された経緯があります。
水難学会・安倍淳理事
「海で親族を流されたご遺族の思いは『最期がどうだったのか』を知りたい。『ここに家族がいたんだ』『この座席に座っていたかもしれない』という情報を得ることは、一つの権利」
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp
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