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テレビ局が起こした不祥事を、番組中にアナウンサーが謝罪することに対して、「アナウンサーに謝罪させるな」などと批判が集まっている。
直近では、7月14日に放送されたTBS系「アッコにおまかせ!」で、宇内梨沙アナウンサーが、前週の番組内で、東京都知事選に関して「漢字表記の候補者名は漢字で書かないと無効になる」などと誤情報を放送したことを謝罪している。
フジテレビも、米大リーグドジャースの大谷翔平選手の新居を場所が特定できる形で報道したとして、7月3日の「Live News イット!」で青井実アナウンサーが、翌日の「めざまし8(エイト)」で西岡孝洋アナウンサーが行き過ぎた取材を謝罪した。
日本テレビも、「24時間テレビ」を今年も放送することを発表した際に、系列局「日本海テレビ」で昨年に起きた寄付金の着服に関して、6月20日に日本テレビで放送された「ZIP!」と「DayDay.」で、水卜麻美アナウンサーが謝罪を行った。
こうしたことが起きるたびに、SNS上では「なぜアナウンサーに謝罪をさせるのか?」といった批判の声が上がる。
企業のリスク広報を専門としてきた筆者から見れば、このやり方は一定の効果はあるとは思うが、最善のやり方とは言い難い。企業として謝罪をするのは、当事者か役職者であるべきで、テレビ局といえども例外ではないからだ。
■人気アナでも「企業の一社員」に過ぎない
一般的に企業が不祥事を起こした際は、対外的な情報発信は広報部門が担う。経営レベルの深刻な問題でなければ、メディア対応も広報部門で行うことが多い。問題が経営レベルまで及ぶ場合や、極度に深刻な事態の場合は、取締役や、場合によっては社長が謝罪をしたり、釈明を行う。
いずれにしても、当事者でも、広報部門でも、経営者でもない一般社員が表に出て謝罪や釈明を行ったりすることは、通常はないし、そうしたところで事態が収束することもない。
子供が問題を起こしたら親が謝る。社員が問題を起こしたら上司が謝る。広報に限らず、立場が上の人間が謝罪するものだし、そうすることによって、相手側の怒りも収まりやすくなる。
テレビ局の看板的な存在感を持つ人気アナウンサーであったとしても、彼・彼女が問題の当事者であるわけではない。いくら有名であっても「企業の一社員」に過ぎない(日テレの水卜アナについては管理職への昇進が発表された。水卜アナが今後どういう役割を担うかはさておき、アナウンサーを早期に役職に就かせて、対外広報の役割も担わせるというやり方はありそうだ)。
つまり、視聴者には「このアナウンサーはどの立場で謝罪をしているのか」という疑念が付きまとうことになる。
筆者自身も、テレビ番組内でのアナウンサーの発言を聞いていて、「この人は会社(テレビ局)としての意見を言っているのだろうか? それとも、個人的な意見を言っているのだろうか?」と疑問に思ったことが多々ある。
では、なぜテレビ局はアナウンサーに謝罪をさせてしまうのか。
■テレビ局の持つ「特殊事情」
テレビ局の問題に対して、アナウンサーが矢面に立って謝罪するのは、次のようなテレビ局ならではの特殊事情がある。
1. 情報発信自体を生業(なりわい)としており、放送事故レベルの日々のトラブルには、放送内で謝罪した方が有効である
2.アナウンサーが企業と顧客(視聴者)との日常的な接点となっている
3.テレビ局には定例社長会見があり、そこで説明の機会が設けられる
筆者は、これらの特殊事情があるにせよ、アナウンサーが謝罪をし続けることが適切かどうかについては、議論の余地があるように思う。
■社長会見までの「つなぎ」に使っていないか
1について、確かにできる限り早く謝罪したほうがいいというのは正しい。だが、テロップの変換ミスや数字の表記ミスなどの「訂正」と、テレビ局の不祥事の「謝罪」を同列で行うべきではない。
24時間テレビの寄付金着服の例は、番組内で起きた出来事でもなければ、自局内で起こったことでもない。誰がどう謝るのか(あるいは謝らないのか)というのは難しい判断が求められるが、「アナウンサーが謝ったから終わり」とはなっていないのが現状だ。
2については、確かに視聴者にとってはテレビ局の社長よりもアナウンサーのほうがよく知っており、親近感もある。だが、前述したとおりアナウンサーは所詮「テレビ局の一社員」であり、不祥事が起きた時に企業を代表して矢面に立つべき役職ではない。
テレビ局側からすると、「より親しみのあるアナウンサーが謝ったほうが叩かれにくい」いう計算もあるかもしれないし、実際にそうであることも多い。
筆者は、広報の仕事に就いた際に、「広報とはその名の通り、“広く報いる”ことだ」と教えられた。アナウンサーの謝罪にとどまっては効果も限定的なものになり、「(世の中に対して)広く報いる」という広報に求められる役割が十分に果たせない結果となる。
また、キー局を中心とした大手テレビ局には定例社長会見が設定されている。この会見は番組改編の発表や業績の報告などを行うためのものだが、不祥事があればこの場で社長が説明を行ったり、場合によっては謝罪をしたりする。アナウンサーの謝罪は、定例社長会見でまでの「つなぎ」として利用されている面もあるかもしれない。
■「守りの広報」が脆弱すぎる
「紺屋の白袴」「医者の不養生」ということわざがある。テレビ局の広報はまさにこれで、世の中の事件や、他人の不祥事のことを報道することに時間を取られて、自社の問題について適正に発信する余裕がないように思える。また、本来は広報部門が対応すべきことをアナウンサーが対応するのが「通常運転」になることで、広報機能が脆弱になってしまっている。
テレビ局の広報部門の主な役割は、自局の番組・コンテンツを宣伝することであり、自社の問題、不祥事等に関する「リスク広報」の機能は概して弱い。つまり、攻めには強いが、守りには弱いのである。しかし、いまテレビ局に求められているのは「守りの広報」ではないかと思う。
■「とりあえずアナウンサーに謝らせよう」という空気感
テレビ局に限らず、メディアに対する批判は日々起きている。一部のSNSユーザー(さらには一部のメディア)からすると、キー局は「特権階級」で、その社長は「特権階級のトップ」であり、叩きたくなる存在でもある。実際、定例社長会見でのテレビ局社長の発言は、概してSNSやネットメディアで叩かれている。
正当なものもあるが、不当なもの、過剰なものも少なくない。
フジテレビの定例社長会見では、アナウンサーによる謝罪の後に、港浩一社長が大谷選手の新居報道について謝罪を行った。しかしながら、SNS上では、「港社長の自宅住所を公開しろ」とか、「大谷選手の新居を無償で用意しろ」といった厳しい批判が寄せられている。
大谷選手の取材は過剰だったとは思うが、「報道の自由」「取材の自由」という大義名分を鑑みると、「批判を受けたから謝る」というのが必ずしも適切とは限らない。
「24時間テレビ」の寄付金着服問題については、日本テレビではなく系列局(日本テレビが筆頭株主であるが)が行った行為でもあり、「どこまで日本テレビに責任があるのか?」という問題もある。
例えば、2015年に起きたタカタのエアバッグ問題や、マンション傾斜問題については、一義的な責任はメーカー側(タカタや旭化成建材)にあるとされた。タカタのエアバッグを搭載した自動車を販売したホンダ、傾斜マンションを販売した三井不動産レジデンシャルの親会社の三井不動産、旭化成建材の親会社の旭化成のいずれも謝罪は行っているものの、親会社に対する激しい責任追及の声は見られなかった。
「24時間テレビ」は何かと批判を集めている状況でもあるから、「とりあえずアナウンサーが謝った」ということなのかもしれない。しかし、それで視聴者の納得が得られたかといえば疑問が残る。
■自社メディアを持つがゆえの「おごり」
余談だが、吉本興業の元専務取締役、元広報担当で「謝罪マスター」と呼ばれた竹中功さんは、吉本興業で芸人の謝罪会見を取り仕切るだけでなく、芸人と一緒に記者会見で謝罪を行い、多くの吉本興業の危機を乗り越えてきた。
闇営業問題が起きた時点で、竹中さんは同社を退社していた。竹中さんが会社に残って対応をしていれば、この問題ももっとうまく収まったのではないかと思う。
当事者と責任者が適切な場所を設けて誠意をもって謝罪すれば、視聴者の納得も得やすくなる。
テレビ局は、自社でメディアを持っていることにかまけ、こうした場を設けることを怠ってきた。アナウンサーと定例社長会見で代替してしまっているというのが実態だ。
■視聴者とのより密なコミュニケーションが必要
事態をうまく収めるためには、テレビ局はまず、アナウンサーと広報担当を切り分け、現場のアナウンサーの代わりにテレビ番組に出て謝罪や釈明が行える役職者を設けるべきだ。
半分冗談だが、メディア企業はCAO(Chief Apologizing Officer:謝罪担当責任者)という役職を作ればよいのではないかと思ったりもする。
筆者は、テレビ局の謝罪については、下記のように考えている。
1.謝るべきことはちゃんと謝ったほうがいい
2.アナウンサーではなく、役職者が謝ったほうが適切(ただし、「テレビ映え」する人物である必要がある)
3.社長まで出てきて謝る必要はないことも多々あるが、アナウンサーの謝罪だけでは不十分なこともある
今回のように、アナウンサーが謝罪するだけでは不十分だが、社長が謝罪するまでもないこと、あるいは社長が定例会見で謝罪しても批判が収まらないケースも目立つようになっている。
要するに、その間を埋める組織や人材が必要ではないかということだ。テレビをはじめとするマスメディアの影響力は依然として大きいが、マスメディアが世論を形成する力は弱くなってきている。SNSやネットメディアでのバッシングが強まっている現状、およびテレビ以外の映像メディアも多数出てきている状況を鑑みると、キー局といえども安泰とは言えない。
リスク広報に限らず、テレビ局は視聴者との接点をより強化し、視聴者とのコミュニケーションを密にしていく必要がある。
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西山 守(にしやま・まもる)
マーケティングコンサルタント、桜美林大学ビジネスマネジメント学群准教授
1971年、鳥取県生まれ。大手広告会社に19年勤務。その後、マーケティングコンサルタントとして独立。2021年4月より桜美林大学ビジネスマネジメント学群准教授に就任。「東洋経済オンラインアワード2023」ニューウェーブ賞受賞。テレビ出演、メディア取材多数。著書に単著『話題を生み出す「しくみ」のつくり方』(宣伝会議)、共著『炎上に負けないクチコミ活用マーケティング』(彩流社)などがある。
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(マーケティングコンサルタント、桜美林大学ビジネスマネジメント学群准教授 西山 守)
]...以下引用元参照
引用元:https://news.nifty.com//article/magazine/12179-3234193/