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■国内のえんぴつ生産量が減少
東京スカイツリーを近くに望む、住宅街の一角。創業73年を迎えた、下町のえんぴつ工場「北星鉛筆」。従業員は28人で、大手メーカーの下請けではなく独自に製造・販売を続けている。
北星鉛筆 5代目社長 杉谷龍一さん(47)
「年間にすると約2000万本作る。一日の生産量だと、約10万本作っている計算になる」
杉谷さんは、葛藤の日々が続いている。
杉谷さん
「子どもたちがタブレット化で、えんぴつを使わなくなってしまっている。今までは子どもがいる分だけ、えんぴつは売れたんですよ。子どもたちが使わないってなると、どうなっていくか怖い部分がある」
国内のえんぴつ生産量の推移を見てみると、かつて年間およそ14億本が作られていたが、現在はおよそ8分の1になっている。
杉谷さん
「えんぴつを家業として作り続けろというバトンが渡ってきていますので、どうやっていくかを考えていますね」
■“削りカス”を粘土にし…問題解消
そんな杉谷さんを長年悩ませてきたのが、製造時に出る木の削りカス。その量は、月におよそ5トン。処分費用が大きな負担となっていた。
このやっかいな“削りカス”問題を、杉谷さんはある取り組みで解消していた。
平日の午後1時、女性たちが工場の横にある建物に集まってきた。
杉谷さんの父で4代目の和俊さん。そして、母の妙公さんも加わり、何が始まるのか?
女性
「ここ、えんぴつ屋さんですよね。木の部分を粉にして粘土にして」
「楽しいんですよ。先生がとてもいいから」
実は、えんぴつの削りカスから作った粘土。みなさん、粘土教室の生徒さんなのだ。
粘土教室の参加者(80代)
「紙粘土とか石粘土と同じ感じで、ここでみんな作ってる。木の感じが出てきて、すごくいいの」
この粘土は、杉谷さんが20代のころに自ら開発したもの。
杉谷さん
「(削りカスを)うちで燃やす時代が続いて、(都の規制で)燃やせなくなって産業廃棄物として捨てるようになった。何かにリサイクルしなければいけない」
2枚の木材を重ねて削り製造するえんぴつ。杉谷さんは、削りカスを業者に託す費用を減らしたいと考えた。燃やすことで、出るCO2の削減にもつながる。
杉谷さん
「固めて薪(まき)にしようとか色んな方法を考えたんですけど、なかなか商売に結びつかなくて」
試行錯誤を繰り返すなか、削りカスを加工した際の粘り気にヒントを得て、カスを粉末にし、のりや水などを混ぜて粘土を製作。リサイクル商品として販売した。
すると、大手雑貨店から高い評価を得た。
杉谷さん
「ハンズの粘土売り場の人が、粘土が一番使いやすかったですよって」
また都内近郊で削りカス粘土を広めるため、JR東日本と連携。駅の構内を利用してイベントを行った。
月に2回行われる、えんぴつ工場での粘土教室も毎回好評だ。
妙公さん
「この年になって、こんなイキイキした生活が送れると思わなかったというぐらい楽しんでやってくれている」
教室は誰でも参加可能。世界に一つだけの自分の作品を作ることができる。
粘土教室の参加者(40代)
「地元の人にとって、ここはなじみがある場所なので。学校も近かったし、地元が世界に誇れるようなエコロジーなものを作って感動しちゃって」
和俊さん
「作ったものが売れる売れないじゃなく、思いを商品化をする。思いをつなげていってやっていけば、100年先存続できる企業ができるだろうという活動ですから」
■アイデア商品を次々に…社長の挑戦続く
下町のえんぴつ工場は、生き残りをかけてアイデア商品を次々と生み出している。
えんぴつが短くなっても合体できる「ecoな鉛筆」や、ノックしたらえんぴつの芯が出てくる「大人の鉛筆」、一見、普通の色えんぴつかと思いきや水を含んだ筆でなぞれば、絵の具になる「大人の水彩色鉛筆」がある。
えんぴつに秘められた無限の可能性を引き出す。杉谷社長は、きょうも挑戦を続ける。
杉谷さん
「えんぴつに、もう1回大人が目を向けて『えんぴつって結構いいね』となるような商品を生み出していければと思っています」
■社長が描く “えんぴつ工場の未来図”とは
えんぴつを製造する時に出る削りカスを再利用している、杉谷さんの思い描く未来図。
杉谷さんが、えんぴつ・色えんぴつ・大人の水彩色えんぴつを使って書いたもので、老若男女、誰もが笑って過ごせる平和な未来を描いているという。
書こうと思った瞬間に何の疑いもなく書けるし簡単には折れない丈夫な芯、いつまでも書ける安心感があるえんぴつ。
そんなえんぴつを、最近使わなくなってしまった大人世代にも日常的に使ってもらい、皆さんの幸せな笑顔の一部をえんぴつが担えることが「私の希望する未来」だと話した。
(「大下容子ワイド!スクランブル」2024年2月23日放送分より)
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp
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