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■先代の味守り半世紀
東京・文京区の春日駅近くにある町中華の老舗「ラッキー飯店」は、開店の10分前にもかかわらず、20人以上の客が並んでいます。
常連客
「子どものころから、ここの中華料理を食べて育ってきた。世界で一番うまいです、ここのチャーハンが」
「日本人の口に合う町中華の名店みたいな」
こだわりの味で地元の人たちの舌を満足させるのは、大将の菅家義和さん(69)。そして、店を支えてきた妻の昌美さん(65)です。
開店と同時に、あっという間に店内は満席となります。
数あるメニューの中でも特に人気なのが、パラパラの焼き飯の頂上にエビとカニが鎮座した「五目チャーハン」。そして、たっぷりの野菜に甘酸っぱい餡をまとった「うま煮そば」です。常連客は名残り惜しそうに、料理を堪能します。
常連客
「おいしいです」
ラッキー飯店がオープンしたのは57年前(1967年)。先代である父・清美さんが始めました。ユニークな店の名前も、先代が決めたものです。
義和さん
「(テナントに)うちが入る前に、ラッキーというスナックがあったんです。それをそのままいい名前だから、看板も『スナックラッキー』を『中華ラッキー』にすれば済んだ話なので、そうしました。その当時、目立って良かったです」
2代目の義和さんは18歳の時から店に立ち、以来50年、その味を守ってきたのです。
昌美さん
「先代から引き継いだ時も『味は変えられない』ということで、主人はかなり大変な思いをしたと思います。昔から知っている人はいろいろ言いますからね」
それでも大将は、そんな苦労があったことを微塵もみせません。
義和さん
「たいしてない、『おいしく作ろう』ぐらい。でも、昔ながらのラーメンだから、それを変えてはいけないなと。味を変えたら違うラーメンになるし、違うチャーハンになる。それは、これを食べようと思ってくる人にとっては嫌でしょ」
そんな味にうるさい常連客に愛されてきた理由。それは厨房(ちゅうぼう)をのぞけば、すぐに分かります。
料理の味はその都度、夫婦でダブルチェック。ずっと続けてきた2人のルールです。
義和さん
「だんだんしょっぱくなっていくんですよ」
忙しい厨房で注文を整理する女将は、この店の要です。
「2人の掛け合い」も、店の名物の1つです。これも「1秒でも早く提供したい」という思いがあればこそ。
常連客
「プロ意識がすごいです。忙しい中でもラーメンとギョーザ、同じタイミングで出すよう調整して」
■店主がん再発で閉店「これ以上は…」
東京・春日にある町中華「ラッキー飯店」。行列の絶えない人気店にもかかわらず、この日をもって閉店する理由は…。
義和さん
「(がんの)再発ということで。やりながら『気持ち悪い』と言っていられないので、それでやめることにしました」
去年、治療したすい臓がんの再発です。1度は懸命なリハビリで復帰を果たした大将でしたが、今回はすぐにでも強い抗がん剤の治療が必要となりました。
昌美さん
「相談して、これ以上無理することはないということで。長く来てくれている客がいっぱいいるので、苦しい思いはありますけど」
子どもも跡を継がなかったため、守られてきた味は途絶えることになりました。
常連客
「1年後、復活するんですよね?」
義和さん
「それはない」
昌美さん
「やれば、会社やめて。教われば。今なら箱から何からみんな貸すよ」
冗談まじりの言葉には、寂しさがにじみます。
中には、大将と女将の缶バッジを作ってプレゼントを用意した人もいました。
常連客
「缶バッジです。先週、写真を撮らせてもらって」
途切れることのない行列も次第に数は減り、ついに閉店の時を迎えます。
閉店時間をすぎても、別れを惜しむ人の波は収まりません。子どもたちからもらった手紙は宝物になりました。
子どもからの手紙
「いつもおいしいごはんをつくってくれてありがとうございました。特に好きだったのは、ラーメンやぎょうざ、チャーハンです。おじちゃんも早く元気になってほしいです。大好きだよ!」
スタッフへの労いを終え、2人きりとなった店内。
昌美さん
「本当に楽しかったですね」
義和さん
「良かったと思います。今までの人生でこうやってきたのは」
57年の歴史に幕を閉じたラッキー飯店が長きにわたり愛され続けた秘訣とは?
義和さん
「まじめにやることでしょうね」
「(Q.何をまじめにやった?)そう言われると、まじめでもないんですけど。毎日、同じように作るということかな」
(「グッド!モーニング」2024年11月10日放送分より)
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp
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