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元プロレスラーの長州力(72)が炎上しています。
11月4日放送の『アイ・アム・冒険少年』(TBS系)の「脱出島」というコーナーに、5歳の孫、由真くんと娘婿の池野慎太郎さんと共に出演。無人島からイカダで脱出すべく、孫にもかっこいいところを見せようと意気込んでいた長州ですが、途中で体の不調を訴える事態に。
もともと腰とヒザを痛めていたのに加えて、番組の拘束時間の長さにもご不満だった様子。「正直言ってギブアップだよ」と、リタイアしてしまったのです。
その後、慎太郎さんと由真くんだけでコーナーは続いたものの、視聴者からは“最初からオファー受けるなよ”とか“仕事舐めるなよ”と批判の声が殺到しました。
最近ではYogiboのCMでのゆるキャラ的展開で人気の長州。自身のYouTubeチャンネルやバラエティ番組などでも、滑舌の悪さと独特の間をもったトークで楽しませてくれます。
そんなタレント性が定着してきていたからこそ、今回のやる気のない態度が目立ってしまったのかもしれません。
◆長州力は「本当に丸くなった」
筆者も放送を見ていました。その上で言うなら、批判する気持ちもわかるけど、いやいや、長州力は本当に丸くなったなと驚きの方が強いのです。
小学校4年生からプロレスにハマった筆者は、長州力の全盛期をリアルタイムで見ていました。その経験からすると、いまの微笑ましい姿はにわかには信じがたい。土曜の16時、『ワールドプロレスリング』(テレビ朝日系)で見ていた長州は、毎週のようにケンカをしていたからです。
大会ごとに、何らかの因縁が生まれ、レスラー同士の派閥が組まれ、抗争が勃発する。その中心には、いつも長州力がいました。ある意味プロレスの試合そのものよりもファンの関心を集めてきたのが、ケンカにおける長州の言動だったのです。
それはいつ大きな傷害事件に発展してもおかしくないと感じるほど緊迫していました。少なくとも、ファンはそのスレスレのところで、長州力という危ういスターを楽しんでいたのだと思います。
いまのプロレスとは全く違った空気感でした。プロレスというスポーツを通じて、ドキュメンタリーを見ているような生々しさがあった。そのテンションを誰よりも醸し出していたのが、長州力だったのです。
◆長州力VS大仁田厚「またぐな」事件
印象に残っているシーンを振り返りたいと思います。
やはり大仁田厚とのやり取りでしょうか。くりぃむしちゅーの有田哲平の“またぐな”のモノマネのあれです。
きっかけは、1998年1月をもって引退をしていた長州に大仁田が挑発を繰り返したこと。大仁田は電流爆破マッチでの対戦を要求したものの、当初長州は突っぱねていました。
しかし、これを機に1999年から大仁田は新日本に参戦。しつこく長州に絡み続けた結果、とうとう2000年7月30日に対戦が実現することになったのです。事件は、この試合の1ヶ月前に起きました。
すでに対戦が決定したのに、大仁田はわざわざ嘆願書を手渡そうと練習中の長州のもとへやって来たのです。「オレは礼儀を守りたいんじゃ」と意図を説明する大仁田でしたが、長州は頑なに嘆願書を受け取ろうとしません。そこでさらに大仁田が近づこうとしたところで、伝説のフレーズが生まれます。
<(フェンス内に)入るなコラ! 入るな! 入るな、入るなよ。またぐなよコラ! またぐな。またぐなよ、またぐな。またぐなよ絶対に>(『東スポWeb』2022年12月18日)
同じ言葉を執拗に繰り返すのが長州です。ただし、一つ一つの音量、ニュアンス、間合いが異なるので、いちいち緊迫感が増していく。「コラ!」は、ドラムのスネアみたいなもの。滑舌が悪いなりにビートが生まれます。
橋本真也との“コラコラ問答”では、「何がコラじゃ!コラ!」(橋本真也)という名言まで生まれました。ケンカを吹っかけた相手のポテンシャルも弾き出す、長州の「コラ!」なのですね。
◆当時からは想像できない現在の姿
長州力というプロレスラーは、この試合に至るまでの過程を劇化するのがとても上手だったのです。この抗争があるから、一発のチョップ、キックに通常以上の痛みが込められる。試合に憎しみという意味が発生するので、ファンは熱くなり感情移入してしまうのです。
他にも、有田哲平や長州小力のモノマネでも有名な「キレてないですよ」を生んだUインターとの抗争や、ザ・グレート・ムタとのタイトルマッチに敗れた控室で、ぶぜんとパイプ椅子に座りながら「ムタはどうったの?(ムタはどうしたの?の意)」と、モールス信号のような口調で振り返る様子なども印象的でした。
おっかなくてピリピリした長州力は、筆者の少年時代に大きなインパクトを残しました。
その姿を知っている人からすれば、『アイ・アム・冒険少年』での長州力は、なんと穏やかだろうと思うはずです。途中でリタイアする理由をちゃんと説明している。「コラ!コラ!」言ってスタッフを威嚇しない。そして、一度去った脱出島を、二度とまたぐことはしなかった。
今日の長州力の姿を想像できたプロレスファンはいないでしょう。
これからも、バラエティタレント、長州力を楽しみにしたいと思います。
文/石黒隆之
【石黒隆之】
音楽批評の他、スポーツ、エンタメ、政治について執筆。『新潮』『ユリイカ』等に音楽評論を寄稿。『Number』等でスポーツ取材の経験もあり。Twitter: @TakayukiIshigu4
]...以下引用元参照
引用元:https://news.nifty.com//article/magazine/12193-3547839/