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■ノーベル平和賞に日本被団協
投下から来年で80年。被爆者たちの思いが新たな平和への指針となります。
日本被団協 箕牧智之代表委員
「私たちが訴えている核兵器廃絶、恒久平和の実現。今度ノーベル賞を頂くことになると大きな力になると思う」
当初されていた大方の予想はウクライナ、パレスチナ、ウイグル関連の人や団体でした。しかし、ノーベル賞委員会が出した選択は、半世紀以上も平和を訴え活動し続けてきた団体でした。
ノルウェー・ノーベル委員会 ヨルゲン委員長
「ノーベル委員会は2024年平和賞を日本の被団協に贈ることを決定しました。広島と長崎の原爆を生き抜いた被爆者は、核のない世界の実現に向けた運動や目撃者の証言を通じて『核兵器が二度と使われてはならない』と訴えてきました。1945年8月の原爆投下以後、世界的運動が起こりました。活動家たちは休むことなく『核兵器使用がもたらす壊滅的な結末』への意識向上に努めてきました。やがて強力な国際的規範が確立され、核兵器の使用は『道徳上許されない』と烙印(らくいん)を押されるようになり、この規範はのちに“核のタブー”となりました。なかでも広島・長崎の被爆者の証言は他に類を見ません。アルフレッド・ノーベルの理想の中心は『熱心に取り組む個人が世界を変えられる』という信念です。2024年平和賞を日本被団協に贈ることで、ノーベル委員会は身体的な苦痛やつらい思い出にもかかわらず、被爆者全員が犠牲を伴った経験を生かして、平和への希望と誓いを醸成してくれたことをたたえます」
日本被団協は、広島や長崎で被爆した人たちにより、原爆投下から11年後の1956年に結成された全国組織です。今回の受賞決定は、核廃絶に向けた長年の草の根運動が評価されことに他なりません。
日本被団協 箕牧智之代表委員
「世界に一つの賞ですから。それが日本になんて思いもしなかったですよ。私たちが訴える核兵器廃絶というものが、一段と弾みがついたんじゃないか。大きな賞を頂くことによって、私たちの発言力も一段と上がるんじゃないか。今は本当に夢の夢」
日本被団協 箕牧智之代表委員
「(Q.喜びは誰に一番伝えたいですか)私は(元委員長の)坪井直さんに伝えたい。お元気であれば一番最初に坪井さんの家に行って報告したい。慰霊碑に行って『坪井さん、ノーベル平和賞受賞することになりましたよ!』と報告させていただこうと思います。今月が命日ですから」
坪井直さんは元被団協の委員長で長年、運動の支えてきた人物です。ただ、3年前の10月に96歳で亡くなりました。
日本被団協 箕牧智之代表委員
「(Q.政治をしている人にどういうメッセージを伝えたいですか)私たちがいつも訴えているように核兵器廃絶、恒久平和の実現。これを世界の皆さんに訴えて。ノーベル賞を頂くと大きな力になると思います。僕たちもさらに磨きをかけてやっていかないといけない」
ASEANに出席中の石破総理、会見で短くコメントをしています。
石破茂総理大臣
「日本原水爆被害者団体協議会に対しまして、ノーベル平和賞が授与されることが決定したという。長年、核兵器の廃絶に向けて取り組んでこられました同団体にノーベル平和賞が授与されることは、極めて意義深いことである」
受賞自体は『被団協』ですが、全ての被爆者、そして日々、核廃絶を訴えて活動している人たちへの敬意でもあります。高校生平和大使は長年、海外でも核廃絶運動を行ってきました。
高校生平和大使 甲斐なつきさん
「被団協が授賞するとは思っていなくてビックリして。私の曽祖父が被爆者なんですが、残した言葉に『被爆地で生まれ育った人間として、核兵器が二度とつかわれないよう世界に訴えていきたい』という言葉を残して。その言葉が体現される時なのではないかと」
長崎県でも。
高校生平和大使 津田凜さん
「(Q.世界に認められた瞬間だったが)被爆者の方々が一つ一つ話をしていくたびに、記憶をさかのぼるたびに、つらい思いだったりとか大切な方々を亡くした思いや悲しい思いがこみあげてくると思うが、それを乗り越えて多くの人に伝えてきた。ノーベル平和賞を通して多くの方に伝わっていくのがうれしかった。私たちも頑張らなければと感じました」
2017年に平和賞を受賞した国際NGO『ICAN(核兵器廃絶国際キャンペーン)」はこのように祝辞を送っています。
ICAN(核兵器廃絶国際キャンペーン)
「おめでとう。広島と長崎の被爆者は、核兵器がもたらす壊滅的な影響に対する人々の問題意識を高め、核兵器を廃絶するためにたゆまぬ努力を続けてきた」
■世界で速報 核は“タブー”か“抑止力”か
海外でもそのニュースは即座に伝えられました。ただ、そこに驚きはありません。核への危機感は同じ気持ちだからです。
CNN ベル主席国際特派員
「初耳かもしれませんが、日本被団協は草の根団体で、1950年代の創設時から“核のタブー”確立に取り組んできました。主に広島・長崎の原爆サバイバーです。来年で原爆投下から80年になります。今までほとんど無名だった日本の草の根団体に賞が贈られて、核戦争・核保有国・核兵器が完全に“タブー”となるかもしれません」
アメリカ人
「原爆投下はあってはならない恐ろしいことだと思います。今回の受賞が正しい方向へ進む一歩になり、勢いづくことを願います。教育が広まり、世界中で互いを理解できればよいですね」
アメリカ以外の核保有国の人たちはどのように受け止めたのでしょうか。同じG7のフランス。
フランス人
「受賞はいいことだと思う。核の拡散は良くないから。でもフランスが核を保有することには反対していない。積極的に使うものではないが、核は抑止力になるから。(Q.『必要悪』ですか)必要悪でしょうね」
核兵器の増強を推し進めている国の一つ、中国は。
中国人
「彼ら彼女は被害者ですよね。傷がある。この賞が皆さんの過去を慰めることができるならいいこと」
「核があれば大国も軽率に戦争を始めることはできません。一定の効果はあるが、大事なのは世界が本当に核兵器を使わないこと。必要だけど使ってはいけない。そう理解しています」
今、最も核の使用をチラつかせているロシアはどうでしょうか。
ロシア人
「プーチン大統領は、兵器がある国々には核兵器を使用する権利があると述べたと。基本的には全てを適切に保つためです」
「(Q.ロシアは核政策を変更しつつありますが)ロシアは変更を強いられていると思います。私は党と政府の政策に同意します。他に言えることはありません」
まだまだ「抑止力」という考えが主流なのは否定できません。改めてノーベル平和賞委員会。史上最年少39歳で委員長に就任したヨルゲン氏は、このような話をしています。
ノルウェー・ノーベル委員会 ヨルゲン委員長
「いつの日か、歴史の目撃者である被爆者はいなくなってしまうでしょう。しかし追悼の伝統と不断の努力で、新たな世代の日本人がその目撃者の経験と思いを引き継ぎ、世界中で啓蒙(けいもう)活動に取り組んでいます。こうして平和な人類の未来の前提条件である“核のタブー”を残そうとしています」
強調したのは“危機感”でした。
ノルウェー・ノーベル委員会 ヨルゲン委員長
「核兵器は80年近く戦争で使用されていません。日本被団協と被爆者団体による並々ならぬ努力は“核のタブー”確立に大いに貢献してきました。だからこそ、このタブーが押しつぶされないか不安なのです。現在進行中の戦争では核兵器使用の脅しが使われています。人類史のこの時点において、私たちは改めて認識するべきでしょう。核兵器は『歴史上最大の破壊力を持つ兵器だ』と」 (C) CABLE NEWS NETWORK 2024
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