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物価が高くて暮らしにくい東京から脱出し、子育て環境のいい田舎に移住しようと考える人が増えているようです。
そんな中、政府が、東京23区に在住・通勤する独身女性が結婚のため地方に移住したら、自治体を通じて60万円の支援金を出すことを検討していると伝わり、SNSが大炎上。
「女性を田舎に住まわせて、そこで結婚して子どもを産ませるなどという政策を政府が推し進めるのは、女性蔑視だ」とか、「たかが60万円で、女性をモノのように扱うな」「地方の男が、女に飢えているわけではない」と……。2007年1月に当時の柳沢伯夫厚生労働相が女性を「産む機械」と言って日本中の女性の怒りを買ったことを思い出させるように、「女は、産む機械じゃない!」という批判の言葉が渦巻きました。
これに対し、8月30日の記者会見後に、自見英子地方創生担当大臣が、結婚を機に地方に移住する女性にお金を出す方針を撤回。騒ぎは収まりました。
この話は「女性蔑視」ということで白紙撤回されましたが、実は「女性蔑視」でない、東京から地方に移住する人に支援金を出す制度自体は、前からあるのです。
■夫婦で地方移住すれば、今なら100万円
東京に人口が集中し、生活環境が低下していることに危惧を抱いた政府は、「デジタル田園都市国家構想」のなかで、2027年までに東京圏から地方への移住者を年間1万人にする計画を立てています。そのため、東京23区に住んでいる人、もしくは東京に通勤している人が地方に移住すると、最大100万円を支援する制度を、2019年4月に創設しました。
この制度は、内閣府地方創生推進事務局が行っている「地方創生移住支援事業」で、対象者が、東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県以外(東京圏)の自治体に移住して暮らしたり起業したりすると、交付金が支給されるという制度。
ただし、東京圏内でも、東京都の奥多摩町や八丈島、埼玉県秩父市、千葉県鴨川市などの「条件不利地域の市町村」といわれるところに移住する場合には、補助の対象となります。
当初は、移住先で就労または起業することが条件でしたが、2021年からは、テレワークで東京の仕事を続けながらでもOKということになりました。さらに2023年4月からは、18歳未満の子どもがいる場合には、子ども1人につき最大100万円を増額してくれる自治体も出てきています。
夫婦世帯の移住であれば、最大100万円、単身者が移住する場合は、最大60万円。さらに移住先で起業するという人には、移住支援金に加えて起業支援金が受け取れる制度もあり、起業支援金は最大200万円が支給されます。
つまり、東京圏に住んでいる、もしくは、東京圏で仕事をしている夫婦が、地方に移住して起業すれば、最大300万円の支援金が受け取れ、子どもがいたらさらに加算があるかもしれないということなのです。
■大学4年間含めて5年の東京暮らしなら対象に
対象者の条件は、直近10年の間に通算で5年以上東京暮らしをしていて、さらに直近1年間、東京23区に在住または勤務している人です。
また、大学に通うために東京で暮らし、大学を卒業後、東京23区内の企業などに就職したという人は、大学に通っていた4年間も合わせて通算で5年間東京に住んでいれば対象となります。
ただし、移住支援金の申請は、転入後3カ月以上1年以内であること。さらに、申請後5年以上、継続して移住先市町村に居住する意思があることなどの条件があるので、詳しくは内閣府のホームページ(https://www.chisou.go.jp/sousei/ijyu_shienkin.html)で確認しましょう。
この制度は、2026年3月まで続きますが、「デジタル田園都市国家構想」自体が27年度まであるので、予算の関係でさらなる延長もありそうです。
ただし、この制度はすべての地方自治体が導入しているわけではありません。利用できるどうかは、移住したい自治体に確認することが必要です。
■東京に限らず全国どこからでも支給対象の自治体も
東京圏から地方に移住する場合に補助金がもらえる制度以外に、自治体によっては、全国どこから移住してきても補助金を出してくれる自治体もあります。
たとえば、宮崎県都城市の「都城・移住応援給付金!」のように、全国どこから移住しても一世帯で最大500万円を支援するという自治体もあります。
通常の移住であれば単身で60万円、世帯で100万円、子ども加算最大300万円(1人あたり100万円、子ども3人まで)のところ、都城市の中山間地(志和池、庄内、西岳、中郷、山之口、高城、山田、高崎地区)に移住すると、単身だと基礎給付60万円にさらに20万円加算され80万円が、世帯だと基礎給付100万円にさらに世帯人数に応じて1人20万円の加算がつくので、夫婦と子ども3人世帯なら200万円にプラスして子ども加算300万円で、合計500万円もらえるというわけです。
令和6年分は、まだ受付をしていますが、移住前の「移住相談登録」が必須であったり、就労などの条件(https://www.sumeba-sumuhodo-miyakonojo.jp/migration/support-payment/)があるので、じっくり読み込んで検討することが大切です。
給付金額の多さは、移住地を決めるひとつの指標にはなりますが、住んでみないとわからないことはたくさんあります。その地方が本当に自分に合っているか、子育て環境に適しているかどうか、事前に現地を何度も訪れるなどして、実際に目で肌で感じること。地方に移住してから「こんなはずじゃなかった」と後悔するケースも多く耳にします。特に移住支援金が給付される場合は「○年以上そこに暮らす意思があるかどうか」も確認されますので、事前のチェックは必須でしょう。
■完全移住前に短期の地域暮らし体験も
失敗移住のケースを少なくするため、「地方創生移住支援事業」の移住支援金とは別に、移住者を迎える体制を整えているところもあります。
たとえば山梨県の北杜市、韮崎市、南アルプス市、山梨市、甲府市、富士吉田市などでは、東京からの移住者に対し、移住お試し住宅を無料もしくは低価格で提供しています。一定期間そこで暮らしてもらい、地域を視察・経験してもらおうというもの。住居・仕事・子どもの就学先を探しに何度も山梨県を訪れている人など、移住を本気で考える人が利用しやすいようになっています。お試し移住は、前述した宮崎県都城市も補助金支給制度を整えています。
いきなり移住するのではなく、こうした短期の移住体験で地域のさまざまな状況を見ながら、じっくり考えてみるのがいいでしょう。
もし、地方移住を考えているのであれば、お得な制度を利用しない手はありません。とことん調べ、納得したうえで最適な地を選ぶことが賢い移住と言えそうです。
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荻原 博子(おぎわら・ひろこ)
経済ジャーナリスト
大学卒業後、経済事務所勤務を経て独立。家計経済のパイオニアとして、経済の仕組みを生活に根ざして平易に解説して活躍中。著書多数。
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(経済ジャーナリスト 荻原 博子)
]...以下引用元参照
引用元:https://news.nifty.com//article/magazine/12179-3431913/