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皇室には悠仁さま、愛子さま、佳子さまという3人の若い皇族がいらっしゃり、マスコミやSNSで年齢にふさわしくない扱いを受けてきた。誹謗されるのはもちろんつらいだろうが、見当外れの称賛や過剰な期待を寄せられて気の毒なこともある。
ただし、皇族のプライバシーを語ったり批判したりすることが不敬だとか不適切だとは思わない。国民が関心を持ち意見を言うのは当然だし、アドバイスは有益である。
昔は不敬罪があったため、皇族は批判されなかったという人もいるが、NHK大河ドラマ「光る君へ」で分かるように、公家たちは帝や皇族にも辛辣で、諫言もしていたし、民衆も噂話を聞いておおいに意見を交わしていた。
戦前も政治家、華族などは意見を言っていたし、うるさ型の側近もいた。戦中・戦後の昭和天皇に対しても、母親の貞明皇太后や弟たち、近衛文麿とか木戸幸一のような重臣、大物の宮内庁長官、入江相政侍従長などはっきりと進言していた。
むしろ平成以降、陛下や皇族に意見を言う人がいなくなったのが問題で、それに代わるのは週刊誌やSNSになり、皇族の方々もエゴサーチされているようだ。
■若き皇族3人の世間の評価は乱高下
こうした中で、普段はおべんちゃらばかりなのに、突然、風向きが変わって「炎上」ということがよく起きるようになった。
悠仁さまは、ご誕生は祝福されたものの、学習院幼稚園に行かれなかったことを境に、本人にとってどうにもならないことまであら探しされている。
愛子さまの場合、不登校問題があった小学生時代は、雅子さまの常識を超えた学校への注文が批判を浴びていたが、眞子さんの結婚問題が出たころから本来心配されるべきことすら絶賛されるようになった。現在も高い人気を誇っているが、このところ、公務をされていないことなどが問題になりだして、これまでの反動が心配だ。
佳子さまは、可愛らしいプリンセスとして人気だったが、学習院大学を中退してICUに移られたことがわがままと叩かれた。その後、海外での立派な振る舞いや手話でのご活躍などで良い方向に変化してきている。
私の見るところ3人ともずっと同じペースでいらっしゃるのに、評判は理不尽なほどに乱高下している。その背景には、世間の勘違いや誤解があるのではないかと考えている。そこで今回は、改めて3人の皇族が置かれている立場と今後について整理してみたい。
■石破氏も愛子天皇の可能性は排除している
まず、現行法では、愛子さまも佳子さまも皇位継承候補でなく、皇位継承順位は「秋篠宮皇嗣殿下→悠仁親王殿下→常陸宮親王殿下」である。継承順位トップが天皇陛下の弟である「皇嗣」のとき、「皇太子」と違うのは、天皇陛下に新たに男子が生まれたときに地位を失うことのみだ。
上皇陛下は18歳の成年時(1952年)に、天皇陛下は上皇陛下即位の翌年(1991年)に「立皇太子礼」を行ったが、上皇の誕生前に継承順位1位だった昭和天皇の弟の秩父宮殿下は、とくに儀式はしないまま上皇陛下が即位されて継承順位が下がった。
秋篠宮皇嗣殿下は、天皇陛下即位の翌年(2020年)に「立太子礼」と同じ内容の「立皇嗣礼」を行った。これは、陛下に男子ができる可能性はないと対外的に表明したことを意味するのであるが、「皇嗣は皇太子と違う」という主張は、新たな男子の誕生の可能性を忘れるなということなのだろうか。
政治的な課題として皇室典範の改正が予定されているというなら別だが、「女系天皇含み」と報じられた石破茂氏でも、「男系優先に決まっているが、女系を完璧に否定していいのかというと、皇室を大切にするということから少しずれていると思う」(今年6月18日のBSフジ番組)と述べ、悠仁さままでの継承は前提にし、愛子天皇の可能性は明確に排除している。
■悠仁さま本人に不安はない
この発言を、「愛子天皇」誕生を期待する一部の識者が「石破首相になれば、長年の宿題解決に向けて前に進む可能性」と言うのは、悪質な印象操作である。
もちろん、悠仁さまに天皇として、重大な欠陥があるなら話は別だ。しかし、そうとはいえない。学業については、東京大学に一般入試で入れるレベルかはともかく、学校推薦入試を利用することが可能な校内での成績であり、共通入試での見込みもあるようである。
お茶の水女子大学附属中学の卒業時、学校側は記者会見で「学校での成績は優秀」と公式に説明しているし、同級生らへの取材でも裏付けられている。体力的にも12歳のときに槍ヶ岳に登頂されたり、スポーツもお好きであるなど頑健であるし、学友からも人間的に危惧させるような噂はなにも出ていない。
受験準備中にもかかわらず、外国王族の訪問への接遇、地方でのイベント参加など公務を器用にこなされており、将来の公務遂行における不安はない。
■愛子さまの皇族としての公務は控えめ
一方、愛子さまは、優秀な頭脳の持ち主で心優しい方であるのは確かだが、皇族としての振る舞いにはだいぶ苦労されているように見える。
学習院大学の最初の3年間はほぼ登校されず、リモート講義だけだった。4年目はゼミなどには参加されたが、大勢の一般学生がいる講義やサークル活動など一般学生との交流はほとんどないままで、学園祭にはお忍びで見学されたに留まった。
眞子さんは16歳、清子さんや佳子さまは19歳から単独公務を開始されてきた。愛子さまは今年5月の文学展見学をもって単独公務の開始とされたが、従来、単独公務の開始とされていたのは挨拶などを伴うものだ。
さらに、皇族は成年の儀を行い、その前月に記者会見に臨む。ところが、愛子さまの場合は準備ができていないと4カ月延ばされた。幸いこの会見はよく準備され、よい出来だったので安心したが、勝手に延期するのはよくない。
成年の儀のあとは、伊勢神宮・神武天皇陵・昭和天皇らの武蔵山陵への参拝が習慣だが、結局、割愛されたまま終わった(2年半後の卒業・就職報告の際には参拝)。宮中での「後宇多天皇七百年式年祭」といった祭祀には出席されているので、公務などしなくてよいと言う人もいるが、無理がある。
■天皇の仕事は予定通り、決められた通りが大事
今年4月から始められた日本赤十字社でのお仕事も、不特定多数の職員や外部の一般人との接触を伴うものはなく、仕事以外でも時間に間に合わず遅刻や延期が多いと『週刊文春』(8月8日号)で報道されている。
愛子さまが慎重な完璧主義者でいらっしゃるのも理由らしいのだが、皇族の仕事は自分で納得するより、スケジュールに合わせてえり好みなく無難にこなすことが基本である。
個性を尊重して、限定的な公務を中心に、徐々に幅を広げていっていただくことを期待することになるが、これは少なくとも天皇としては向いたスタイルではない。
それでも、現行の皇室制度を変えてでも愛子さまを天皇にと主張する方は、「従来の象徴天皇としての公務はあまりしなくていいから密かに祈っていてくださればいい」と、象徴天皇のあり方を根本的に変えることが好ましいと判断されているのだろうか。
■愛子さまの活動の幅が広がるよう促すべき
どうしてこうなったかといえば、愛子さまが一歩前に出ることを一部の人々の迎合が邪魔してきたからだ。大学に登校されないことに対して「ご両親である両陛下に新型コロナを感染させまいとする素晴らしい親孝行」と褒めた人がいたが、学生が登校することは親不孝なのか。心配なら、ご両親との接触を減らしたらいいだけである。
当時、陛下は天皇誕生日の記者会見で2回にわたって、学生時代に勉学のみならず友人たちと過ごすことの重要性について言葉を尽くして語られたのだから、国民にも愛子さまに登校するように促してほしかったのだと思う。しかし、そのお言葉すら不思議なほど控えめにしか報道されなかった。
陛下は、学習院大学で彬子女王の肝いりで開かれた故三笠宮殿下の回顧展に愛子さまをお連れになった。これが、1年生時にオリエンテーションで登校されたのち2年ぶりのキャンパス訪問となり、徐々に登校回数を増やすきっかけになった。
私はやはり、愛子さまが単独公務を本格的に開始されるなど、活動の幅を広げるように世論も促すべきだと思う。
■「未来の天皇」としての活動がスタート
悠仁さまは、民法改正の影響で、9月6日に18歳の成年を迎えられる。これまでは皇太子のみが18歳の成年で上皇陛下にはこれが適用された。天皇陛下は当時、昭和天皇が健在だったので20歳で成年した。
一連の成年行事は、上皇陛下のときの前例にならって大学入学後の来年に行われる。これを機に、昭和年間の浩宮さまのように「次の次の天皇」としての位置づけで活動されることになる。
よいスタートを切れるよう国民が後押しすることが、自信を持って帝王学を身につけてもらうために望まれる。未来の天皇にあれやこれや理不尽ないじめをすれば、悠仁さま自身が国民に対して屈折した感情をお持ちになりかねない。
もうひとつの私の希望は、悠仁さまが成年を機に、上皇陛下ご夫妻や天皇皇后両陛下と多くの時間を過されることだ。悠仁さまの帝王教育はご両親が行き届いた配慮でされているが、経験者のおそばで時間を過ごさないと得られないことは多い。
■「単独残留案」を選択肢に入れるべき理由
佳子さまと愛子さまにはぜひとも、現在、各政党間で協議が進められている「女性皇族単独残留案」(結婚後も内親王だけ皇族として留まる制度)を前向きに選択肢に入れていただきたい。
この制度の詳細は、新刊「『系図でたどる日本の皇族』(宝島社)で詳しい解説をしたが、家族内で身分が違うのは不自然と言う人もいるが、国際結婚で夫婦の国籍が違うとか、親子で違うこともあるわけで、それに比べれば、たいした不便ではないだろう。
待遇面では、愛子さまが結婚後、赤坂御用地内に御所を得ることも可能だ。国会議員宿舎に女性議員が民間人の夫と一緒に住んでるのと同じで不都合はない。
収入は、最大で年間税抜き3000万円の皇族費が出て、さらに配偶者の収入が加わるので、普通のサラリーマンと結婚しても裕福な生活が保証される。公務員や研究者でもいいわけで、愛子さまのお相手には外交官など最適だ。
■愛子さま、佳子さまにご活躍していただく道
「光る君へ」の源倫子のように、両陛下の元で婿を迎えて穏やかに暮らせる。いまの制度で結婚して民間人になると、1億数千万円の一時金はもらえるものの、小室氏と結婚した眞子さんについて懸念されたように、元内親王としての品格が保てるかという懸念があった。新制度が適用されればそうした心配がなくなる。
女性皇族本人だけが皇族として留まるから、結婚相手が「自分も皇族になるのは窮屈だ」と及び腰になることもない。皇族になると姓もなくなり、婿養子になるのと同様だが、そういうこともない。
もちろん、佳子さまや愛子さまが、これまでどおり皇室離脱を好まれるなら止められないが、佳子さまには、悠仁さまが天皇になったときに、姉として支えてもらいたいし、皇室外交でも貴重な戦力である。
愛子さまは、体調が優れない雅子さまを身近で支えてもらえたら安心だ。公務でも、ときには雅子さまの代わりを務めて、陛下に同行していただければ雅子さまの負担も減る。
女性皇族単独残留案というのは、皇族女子が結婚しやすいだけでなく、その後まで個別具体的に見通して工夫された絶妙の提案なのだ。
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八幡 和郎(やわた・かずお)
歴史家、評論家
1951年、滋賀県生まれ。東京大学法学部卒業。通商産業省(現経済産業省)入省。フランスの国立行政学院(ENA)留学。北西アジア課長(中国・韓国・インド担当)、大臣官房情報管理課長、国土庁長官官房参事官などを歴任後、国士舘大学大学院客員教授を務め、作家、評論家としてテレビなどでも活躍中。著著に『令和太閤記 寧々の戦国日記』(ワニブックス、八幡衣代と共著)、『日本史が面白くなる47都道府県県庁所在地誕生の謎』(光文社知恵の森文庫)、『日本の総理大臣大全』(プレジデント社)、『日本の政治「解体新書」 世襲・反日・宗教・利権、与野党のアキレス腱』(小学館新書)など。
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(歴史家、評論家 八幡 和郎)
]...以下引用元参照
引用元:https://news.nifty.com//article/magazine/12179-3354926/