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スウェーデン出身の男性の自宅には、数千体の人形。アメリカから来日の女性は「侍の時代の染め物に興味がある」と話し、購入したのは100年前の“端切れ”で作った服5万8000円です。
骨董市には、用途不明な品もあります。アフリカで使われた600年前の腕輪。実は、貨幣として使われていました。
さらに、店主も分からない“謎の骨董”を発見しました。木製の“肩たたき棒”のようなもの。調査すると、たどり着いたのは「お寺」!?
■のぼり旗&100年前の布で作った服
全国から250店舗以上が出店する、日本最大規模の骨董市「骨董グランデ」。美術品からジャンクな品まで、およそ25万点のアイテムを求めてマニアが殺到します。
アメリカから来たカトリーンさんは、次々と洋服を試着していますが、一体これは何かというと、明治時代の“のぼり旗”をリメイクして作った服なんです。
古布のリメイク店 店主
矢野貴子さん
「明治時代ぐらいの旗です。神社とかの、のぼり旗」
カトリーンさん
「大好き、大好き、大好き。侍の時代から使われている染物にすごく興味があるの」
購入したのは、大きな漢字が入った服。お値段は3万5000円です。そしてもう一着購入したのは、100年近く経つ、古い布を組み合わせて作った服。お値段は、何と5万8000円ですが…。
矢野さん
「こういう布は、もうないんですよ。皆さん、燃やしたり捨てたりして…。シルクの着物はいっぱいあるの。皆さん大切にとっていらっしゃるから。だから100年とかの(昔の)布が残っていたらボロでもいい値段します」
カトリーンさん
「アメリカでは、パッチワークは人気だけど、服は作らない。日本人の発想って素晴らしい」
■ひな人形マニア「家に何千体とある」
スウェーデン出身 日本在住38年
クリストファさん
「人形関係。ひな人形」
「(Q.コレクションはどれぐらい?)何百体、何千体ある」
携帯の写真フォルダを見せてもらうと、ほぼひな人形。
クリストファさん
「多分90%は(ひな人形)」
クリストファさんは希少価値の高い、古いひな人形を集める超絶マニアです。
明治時代のもので、ひな人形のルーツと言われる「立ち雛(びな)」。さらに、「舌切り雀」や「浦島太郎」など、おとぎ話を題材にしたものもあります。
クリストファさん
「(ひな人形は)6畳の部屋に天井までぎっしり。30年前に買ったもの、もう30年間見てないので。お義父さんに買ってくるなと。パパストップがかかってます」
そこまでして集める理由は、誰もが楽しめるひな人形の魅力にあるといいます。
クリストファさん
「色の使い方、重ね方とか、土からできたもの、紙でできたものとか…。庶民から天皇家までのものとか色々ある。金額はどうでもいいんです、財産なので、日本の宝なので」
■震災で割れた骨董品
一方、真剣な表情で器を見つめる、アメリカからの観光客・イアンさん。それは、石川県の伝統工芸品「九谷焼(くたにやき)」です。
イアンさん
「僕の家族は和食器のファンなんだ。特に母が大好きなのでお土産を探しています。美しい…」
「“絵付け”が繊細で本当に素晴らしい」
鮮やかな色使いに、華やかな絵付けが器いっぱいに描かれる九谷焼。中でも人気なのは、江戸時代のわずか50年の間にしか作られなかったという幻の焼き物「古九谷(こくたに)」です。
九谷焼のファン
「古九谷って華やかなものと、渋めのものと、個性があって楽しいですよね」
「興味あるんですけど、高くて」
都内にある骨董店では、割れた古九谷がなんと26万円相当で売られていました。
骨董市に出店した店主が取り出した皿も、継ぎはぎされたもの。
骨董店 店主
「能登から出た古九谷なんですけど(地震で)割れちゃいまして。粉々になって、がれきの下になって」
今年の能登半島地震によって、割れてしまった古九谷の破片を能登の業者から買い取り、修復して再生させようとしていました。
実は今、こういった被災地の陶磁器を無償で修復する、話題の匠がいました。
■骨董品を無償で修復 そのワケ
能登半島地震で壊れてしまった骨董品を無償で再生している美術家がいます。
東京・荻窪にアトリエを構える美術家・ナカムラクニオさんが行っているのは「金継ぎ」といい、破損した陶磁器を漆で接着し、金粉で装飾して仕上げる伝統的な修復技法です。
これまで、石川県の被災地から受けた修復依頼は40件以上。すべて、無償で行っています。
ナカムラさん
「これは結婚式の記念に上司がくれて飾っていたらしくて、これだけはどうしても直したいと言って、わざわざ手紙を添えて送ってきてくれたんですけど」
人間国宝が作ったという九谷焼の花瓶。折れてしまった首の部分を修復。金継ぎしたことで、つなぎ目もおしゃれに生まれ変わりました。
一方、こちらは希少な古九谷の花瓶です。
ナカムラさん
「(地震発生日の)元日に飾って、その日に割れちゃった。年に一回しか飾らない…これだけはどうしても直したいって言われた」
バラバラに割れた花瓶は4カ月かけて接着。うっすらと見えるつなぎ目を金粉で装飾していくといいます。
実は、この金継ぎは海外で大人気。壊れたものを再生させる日本の技術は、より価値を高めることもあるといいます。
そんな金継ぎによる修復をナカムラさんが無償で行うのにはワケがありました。
ナカムラさん
「(地震で)自分の家が壊れた経験って人生で初めてだったんですよ。自分も『当事者として何かやらなきゃ』って思ったんです」
ナカムラさん自身も、輪島と珠洲(すず)に作ったアトリエが地震で大規模半壊していたのでした。
ナカムラさん
「器自体も結構長く使っていると、自分の分身みたいに感じると思うんです。だから自分の分身を直すことによって、自分も再生できるって思ってくれたらいいなと思っています」
■傘の形をした酒器「遊び心がある江戸時代のもの」
持ち主の思いが詰まった骨董。しかし中には一見、その用途が分からない“不思議な骨董”がありました。
民族雑貨を扱う骨董店で発見したのは、600年ほど前にアフリカで使われていたという腕輪。まさかの使われ方をしていました。
アフリカ・マリ出身 店主
「貨幣」
「(Q.貨幣?お金ってことですか?)そうそう。これも、みんなそう。昔のブレスレット型の貨幣」
「(Q.これでやりとりするんですか?)そうそう、物々交換。こういうふうに着ける」
金属製の腕輪は、15世紀ごろからアフリカの様々な部族で貨幣として使われていたといいます。
続いて見つけたのは、木製で筒状の骨董。江戸時代のものらしく一見、傘のように見えますが、その正体とはお酒を入れる「酒器」でした。傘の形をした理由は、江戸っ子の粋なしゃれっ気にありました。
骨董店 店主
「お花見に行く時に、これを持っていくわけです。すると、『天気もいいのに傘なんか持ってくんだよ!』ってなりますよね。それで桜の木の下に行ってから、おもむろに『おい、どうだい一杯』っていう感じでお酒を入れて出したんです。遊び心がある江戸時代のもの」
■肩たたき?仏具? 謎の骨董の正体は
何とも不思議な骨董の数々。さらに、「謎の骨董がある」と聞き、我々は神奈川県の骨董市に向かいました。
骨董店 店主
栗田安司さん
「(Q.これなんですか?)これ、ほとんど農家さんから出てくるものなんです。おそらく農家で使った何かの木を加工しているのかもしれない」
球体が付いた曲がった木の棒。店主も知らない“謎の骨董”の正体を追跡しました。
骨董店 店主
「民具で使うとすれば、脱穀とかたたく(道具)。色々ありますけど…分からないですね」
骨董店 店主
「これ肩たたきじゃないですかね。こういうのって個人で勝手に作っちゃうから」
謎の骨董は、肩たたきに使うものなのでしょうか?ヒントを求め、東京・巣鴨へ向かいました。肩たたき棒を使ったことがありそうな人々に「なんだと思うか」聞ききました。
街の人
「肩たたき」
「これ肩(たたく)?違う?」
やはり、肩たたきと答える人が多い一方で…。
街の人
「これ、お花じゃないかしら?蓮(はす)の花の何かに似ている」
雑貨店 店主
「蓮のつぼみの固くなっちゃった乾燥したやつじゃないかな?あとで漆を塗ったとか…」
曲がった棒は茎、丸い部分は蓮のつぼみと予想。よく目にするのは仏像の横に飾られたもの。ということは…仏具?そこで、とげぬき地蔵があるお寺に聞いてみました。
とげぬき地蔵尊高岩寺
来馬明規住職
「(Q.何だか分かりますか?)ちょっと拝見します。如意(にょい)ではないでしょうか」
如意とは、法要などでお坊さんがお経を唱える時に、手にもつ道具とのこと。
仏具店に確認してみると、先端に蓮のつぼみを模した江戸時代の如意ではないかということ。ついに、その用途が判明しました。
実はこの如意、昔は意外な使い方をしていたのだそう。
来馬住職
「私が習ったのは“孫の手”だっていうんですけど。“如意”→意の如(ごと)し(意のままである)と言われるように、“かゆいところに手が届く”ということで如意ということなんでしょう」
「肩たたき」ではなく「孫の手」、まさかのニアピンでした!
骨董に隠された、知られざる歴史。それも魅力の一つなのかもしれません。
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp
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