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■成功率90% 家電修理人 海外へ
見たこともない家電でも、修理成功率90%を誇る達人・今井和美さん。番組が全国から舞い込む難題を解決する今井さんの姿を追い続け6年。ついに今回、海外からのSOSに応えることに!
今井さん
「タイです。私によく似た人がたくさん歩いております」
今井さんがやってきたのは、日本からおよそ4300キロ離れた世界有数の親日国・タイです。
到着早々、日本ではお目にかかれない光景に今井さんが驚くことに…。
今井さん
「(修理を)露店でやっているのがスゴイね」
首都バンコク市内の道路脇に立ち並んでいるのは、なんと家電製品を修理する屋台です。およそ250メートルの通りに、20軒以上が軒を連ねています。
屋台の修理人
「(修理を)20年以上やっている」
今井さん
「扇風機専門?」
屋台の修理人
「大体そう」
今井さん
「メーカーのサービスマンに見せてあげたいね。一生懸命直しているところ。日本だったら『買え買え』うるさい」
家電は買い替えるよりも、修理して使い続けるモノという考えが根付いているといいます。
修理屋の客
「完全に壊れるまでは直して使い続ける。父は私が小さい頃に買った冷蔵庫をいまだに使っている」
■切実なSOS 直せる?“ナゾの巨大装置”
今回、そんなタイから今井さんの元にある切実なSOSが舞い込んだんです。
向かったのは、バンコク中心部から車でおよそ1時間半。のどかな田園風景が広がる郊外の町。そこで今井さんを待っていたのは、今井さんの背丈よりも大きな機械。20年以上前に中古で購入したアメリカ製のフィルム映写機です。
今井さん
「へへ、謎の機械だね」
依頼人 ブライトさん(46)
「野外映画をタイの人たちのために始めた。娯楽が少ないからね」
修理を依頼したブライトさんは、映画好きが高じ「野外映画」を運営していると言います。全国を巡り各地の公園やイベント会場に出張し、年間200本を上映。年間の平均気温が29℃というタイならでは。季節を問わず屋外で楽しめる娯楽として親しまれてきました。
ところが、半年ほど前、突然の故障。
ブライトさん
「タイの修理の専門家に聞いても原因が分からない。借金をしてこの仕事を始めた。車も何もかも売った。ここまでくるのに苦労した」
途方に暮れていたところ、今井さんの存在を知り修理を依頼しました。ただ、番組とともにタイに渡った今井さんですが…。
通訳
「こういう映写機直したことありますか?」
今井さん
「ないない、見たこともない」
通訳
「初めて?」
今井さん
「全然。謎の機械だね」
果たして、ブライトさんたちの期待に応えることはできるのでしょうか…。
■映写機は大切な“相棒”
野外映画の仲間 バンクさん(29)
「なぜか分からないけど、回転が止まってくれない。回転が止まるはず」
故障したのは、スクリーンに映像を投影するためのレンズを回転させる部分。
本来、フィルムの位置に合わせ自動ですぐ止まるはずが、なぜか回り続けて止まらなくなってしまったんです。
今井さん
「コレこう切り替わって何を切り替えているんだろう?」
今井さんも、初めて目にする業務用のフィルム映写機。まずは、仕組みを一から学びます。
今井さん
「これは回るんだよね?これはどう?マグネットね、吸い付くのね。磁石が近付いてくるとONするスイッチがコレとコレ。それがONしないのか、ONしてもその先の制御装置が動かないのか」
祈るように見つめるブライトさん。
ブライトさん
「野外映画は、子どものころ『一番の娯楽』。それを仕事にすることは、ずっと夢だった。タイでも映画館のデジタル化が進んで、フィルムは撤去されている。映像はこっちの方が良い。こっちの方が美しい」
子どものころ、地元の寺院で開かれた野外映画のトリコになったというブライトさん。
フィルム映画にこだわっているブライトさんにとって、この映写機は替えの利かない大切な“相棒”です。
黙々と故障の原因を探り続ける今井さん。いつしか辺りは真っ暗に。
今井さん
「この基板のどれか部品の不良ってこともある」
一通り調べた結果、故障の可能性が高そうな基板を預かることに。翌日、ホテルで基板の修理に挑みます。
今井さん
「全部つながってないといけない。4本くらい切れている。短いのが切れているやつ」
千切れていた配線を、ハンダで補修。さらに基板の銅線も切れていました。
すると、日本から持ってきたかばんから取り出したのは…。
今井さん
「じゃあまあ、こんな線を使って足すと“たまたま線”。“たまたま”あった“線”でなんでも良い。電気を通す線だったら」
とりあえず修理は完了。ところが。
今井さん
「初めての機械だから動かしてみないと分からないね。現場に行きましょう」
ブライトさんの映写機は直るのでしょうか。
今井さん
「よし、これでテストしてみるか」
果たして…。
壊れて回り続けていた部分がぴったりと適切な場所で止まりました。見事、修理完了です。
今井さん
「謎の機械が直りました」
皆さん、直って大喜び。
ブライトさん
「天才すぎる。今井さんの腕は神がかっている」
その日の夜、復活を祝い上映会が開かれました。お客さんは近所の住民たちと今井さんです。
今井さん
「良いね、野外映画、良いね。日本でもやってもらうと夏、野外で見るの良いね」
これにて一件落着ですが、実は今井さんのタイ修理旅は、これで終わりじゃないんです。
■SOS続々 “形見の音色”をもう一度
一年前、今井さんのちょっと変わった夏休みに密着。行き先は、沖縄の離島・竹富島。
島民
「電器店がないんですよ。直したくても直せないって結構ある」
あえて電器店がない離島へ行き、困っている島民の家電を修理したんです。
今井さん
「その場所特有の故障っていうのがある。色々な経験をするのはいいですよね」
普段とは違う環境で修理を体験できることが、今井さんの職人魂に火をつける!というわけで…。
今井さん
「すごいのが売っている。カブトガニだ」
観光も楽しみつつ、せっかくなら他にも依頼がないか現地の通訳さんに探してもらったところ、やってきたのはバンコク市内の一軒屋。待っていたのは年代モノのオーディオ機器でした。
それは60年以上前に製造された日本製のレコードプレーヤー付きの真空管ラジオ。
修理を依頼したのは、プラサートさん(59)です。
依頼人 プラサートさん
「物心がついた時にはこの家にありました。幼いころ父がかけて聞かせてくれていた。いつか修理できる機会を、ずっと待っていた」
5年前、他界したプラサートさんの父。ラジオや音楽を聞くことが大好きだったお父さんが、大切にしていた形見だといいます。
プラサートさん
「父にいつも教えられていた。モノは使える限り大切に使い続けることを」
早速、点検を開始。
今井さん
「スイッチ壊れているね」
プラサートさん
「(スイッチを)回しても音が出ないんだ」
電源スイッチが壊れています。
今井さん
「古いから、まぁ仕方がないね。色々あるね。まぁ最善を尽くしましょう。とりあえずバラしてみましょう」
スイッチの部品の中を見てみると…。
今井さん
「割れてる」
電源をつけるための部品が、中で割れていました。
今井さん
「まぁこれだけ年数経っていたら経年変化でバキッと折れちゃったんだろうね」
溶接をしてガッチリつけます。すると…。
今井さん
「入ったね。直ったね、スイッチ」
とはいえ、かなりの年代モノ…。至る所にガタがきていました。
今井さん
「ノイズがあるね」
ノイズの原因は長年蓄積した内部のサビやほこり。
今井さん
「真っ黒だね」
サビをカッターで削り落とし、細かなほこりはスプレーで徹底クリーニング。
■どうする? タイには部品がない
順調に修理をすすめる今井さん。しかし、ここで問題が。
ラジオの選局をするためのダイヤル糸が経年劣化で切れてしまっていました。
今井さん
「ここにつながっていたら回るけど…千切れてしまって回らない」
これは、普通の糸で代用できるものではないそうで、急きょ今井さんが向かったのは、電気製品に関わるモノはなんでもそろうといわれる、秋葉原のような電気街・バンモー。
今井さん
「タイはすごい。扇風機がすごい。日本にそんなに扇風機ないから」
ここはタイ国内では、最も規模が大きく品ぞろえも豊富な電気街だといいますが…。
通訳
「さっきのお店が言うにはもうほとんど売ってないよって」
店員
「ないない」
「ないです」
今井さん
「なさそうな気もした」
レトロなラジオ用のダイヤル糸は入手困難。さすがの今井さんも、部品がなければ、万事休すか…。すると。
今井さん
「日本から持ってくるか」
プラサートさんのため、なんとか修理してあげたい。そんな今井さんの要望を受け、都内にいる番組スタッフが三重県にある今井さんの作業場へ急行。
そこには、あらゆる修理依頼に応えるため、今井さんが長年かけストックしてきた、数千種類の部品が。レトロなラジオ用のダイヤル糸も確かにありました。
今井さん
「どれどれどれ、おぉ、これこれこれ」
再びプラサートさんの元へ。届いたダイヤル糸を手際よく巻きつけていきます。
今井さん
「動くね」
これにて修理完了です。スピーカーからは、現地のラジオ局の音声が流れていました。
プラサートさんの目には、在りし日の父の姿が浮かんでいたのかもしれません。
今井さん
「よかったね。直って」
プラサートさん
「今井さんにお会いできてうれしかったです」
古い家電を直して使うタイでも、今井さんのスゴ腕はたくさんの笑顔を生み出していました。
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp
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