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“格安”の一番の理由は、この店が若手職人「育成の場」であり、すしを握るのは“見習い”の職人であることです。
番組は、10年修行して初めてすしを握れるといわれるすし業界で、3年目にして“一人前”の職人への昇格を目指す22歳“見習い”職人に密着。ある日、突然の「昇格試験」が告げられました。果たして親方に認められ、“一人前”への昇格は果たせるのでしょうか。
■高級すし“格安”実現なぜ?
高級すしを格安で実現できる理由の一つ。店内を見ると、客は誰も座っていません。銀座では珍しい「立ち食い店」なのです。
さらに厨房(ちゅうぼう)にも仕掛けがあります。地下フロアをすべて使った巨大「セントラルキッチン」です。目と鼻の先にある銀座総本店と一緒に仕込むことで、効率化がはかれます。
そして、格安になる最大の理由が“見習い職人”です。
握り手は、若手ばかり。実は彼ら、総本店に戻れば「手子(てこ)」と呼ばれる見習い職人。本来、すしを握るどころか、魚をさばくことさえ許されてはいません。
“見習い”職人 山本颯人さん(23)
「大体、銀座のおすし屋さんは10年修行して『握り』がスタートする形なので。こういうお店を作っていただけることはありがたいなと思います」
価格が抑えられているのは「若手職人の勉強代」として、店が負担しているからなのです。
おまかせだけではなく、お好みも破格の安さ。大人気のバフンウニは総本店では一貫3300円のところ980円。骨から煮詰めたタレが自慢の煮アナゴは、かける手間暇は他店の数倍だとか。総本店で一貫1650円が580円。こんなにお安くて、経営は大丈夫なのでしょうか?
ONODERAフードサービス 「鮨 銀座おのでら」
坂上暁史統括総料理長(51)
「ハハハ(笑)正直キツイですよね。利益度外視までは言わないですけれども」
そう答えるのは、ONODERAグループ統括総料理長・坂上暁史さんです。
坂上統括総料理長
「(始めた理由は)いつになったら握らせてもらえるのかなとか、魚さばけるのかなという明確な目標がないと離職につながってしまいますし。であれば、先にまずやらせてあげようと」
この店で腕が認められれば一人前の職人に昇格するという、若手の離職防止にもつながるこのシステム。これまで3人が昇格を果たしました。
彼らは店名の「登龍門」になぞらえて“昇り龍”と呼ばれています。
“見習い”職人 江木直樹さん(22)
「目標は昇り龍になりたいです」
中でも、一際フレッシュな職人が江木さん。昇格を目指す、若き職人の日々に密着しました。
■外から見ると一緒のすし…違いは?
江木さん
「(Q.ここに勤めて何年ぐらい?)(おのでらに就職して)4月で3年目ですね。丸2年終わったところです」
「(Q.登竜門に抜擢(ばってき)されたのはいつ?)2月から入ったので、2カ月半くらいです」
そんな江木さんを厳しい視線で見つめるのは、親方の坂上統括総料理長です。ひとたび握り始めると、若手は思わず自分の仕事が疎かになり、ただただ見入ってしまっています。
江木さん
「一言で言うと憧れ。(作業が)速くてきれい。(時間に)追われているだろうけど、追われていないような」
早速、江木さんの握るすしをいただくことに。おすすめの中トロです。桝田沙也香アナウンサーも、江木さんに太鼓判。続いて親方が握った同じ中トロをいただきます。
外から見ると一緒に見える2つのおすし。一体、どこに違いがあるのでしょうか?
大きな味の差は“酢飯の握り方”にありました。
坂上統括総料理長
「すしとしての形はあるけど、シャリのまとまりがない」
酢飯だけを見てみると、親方の握った方は、口に入れた瞬間ふわりと解けるように真ん中に大きな空洞があり、それを覆う周りの酢飯はすべて均一の厚さ。これが理想の形です。
一方、江木さんの酢飯は空洞はできているものの酢飯の厚さはバラバラ。さらに、比較すると差は歴然です。
坂上統括総料理長
「例えば、ここに割れ目があるでしょ。はしで持った時、崩れちゃう」
江木さんの酢飯は、明らかに歪です。
坂上統括総料理長
「ワン、ツー…2手で。3手も4手もクルクル返すと、どんどんシャリはしまってくる」
本来、「2手」で握るはずが、江木さんは不安から何度もこねてしまい、無駄な力が酢飯にかかっていたのです。
■親方の「仕入れ」同行で…得た知識
さっそうと表れた親方を待っていたのは江木さん。魚の目利きの勉強のため、親方の「仕入れ」について行かせてほしいと、志願していたのでした。
仕入れのポイントは…。
坂上統括総料理長
「良い魚はもちろんですけど、お値段というのも大事ですから、高いもの高いものばかりではなく、良いものをどれだけ安く仕入れるか」
すると…。
坂上統括総料理長
「でかいの来ます。でかいの」
巨大な天然のヒラマサです。
坂上統括総料理長
「こういう大きいのは、なかなか買えるところが少ないので。価格的にもグッと抑えられる」
卸売業者
「あんまりいないんですよ。この大きさを1軒で持っていけるすし屋さん」
個人の高級すし店では大きすぎて使い切れない、かといってチェーン店などでは天然魚は高級すぎる。需要の少ない大物の天然魚は、意外と安く購入できる魚なのだそうです。
江木さん
「(Q.天然で大物ほど狙い目って知っていた?)全く(知らなかった)です。小さいものが(だけ)が良いわけではないという(ことを知れた)のは、ここに来てよかったなと思いました」
卸売業者
「一所懸命仕入れやってくれています。若くて勢いありますから。あすのスターだよな」
江木さん
「はい、頑張ります」
■家でも…握りの練習
夜、江木さんの自宅にお邪魔させてもらいました。ふと手元をみると、すしを握る仕草をしています。手に何か持っていますが、これは?
江木さん
「シャリ玉みたいに作った、ペーパーを丸めて。シャリに見立てたもの。これやっていないと落ち着かなくなる」
帰ってくるなり、握りの練習。家でもすしのことばかり考えています。
江木さんがすし職人を目指したのは、中学生になったばかりの頃。テレビで堂々とすしを握る職人に憧れ、この世界に入りました。以来、夢にまっしぐら。すしのことなら、つらい修行も苦にならないそうです。
■「昇格試験」結果は…?
数日後、いつものように仕込みをする江木さん。しかし、その表情はちょっと硬めです。
江木さん
「これから親方と握りの…この間やったので」
「(Q.握りのチェック?)そうです」
急きょ「昇格試験」が行われることになりました。今、おのでらグループは新店舗ラッシュ。即戦力となるすし職人が必要な時期なのです。そこで江木さんに白羽の矢が立ちました。まさに千載一遇のチャンスです。
坂上統括総料理長
「江木やるぞ」
江木さん
「はい、やります」
坂上統括総料理長
「90点だったら登竜門卒業で“昇り龍”」
課題は「赤身の握り」です。数週間前「2手で握らないといけない」と指摘を受けていましたが、果たして?
赤身を握る試験が始まりました。まず1手、そして2手。
江木さん
「手が震える…」
手数は2手に抑えました。評価は!?
坂上統括総料理長
「はかりを持ってきて」
江木さん
「はい」
突然、はかりを用意するよう指示。一体、何が?
坂上統括総料理長
「これが江木のシャリ、9グラム。これが俺、7グラム」
ほとんど同じサイズなのに、2グラムも軽い親方の酢飯。つまり、その分空気を含んでいるということです。
坂上統括総料理長
「握っている時間が長いから。どんどんシャリの間の空気が詰まってくる」
2手にこだわりすぎた結果、酢飯をつかむときに米に余分な力を加えてしまっていたのです。
坂上統括総料理長
「きょうは27点。そんなに簡単じゃないよね。ま、道はまだまだ。長いんで焦らず、焦って」
江木さん
「頑張ります」
「まだまだでした、諦めず頑張ります」
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp
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