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「大谷翔平のCM継続」は正しかった…大企業の宣伝部が「タレントの不祥事」でCM打ち切りを決める基準|ニフティニュース -芸能ニュース/炎上まとめ

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米大リーグ・ドジャースの大谷翔平選手の専属通訳を務めていた水原一平氏の違法賭博疑惑が波紋を広げている。このうち、三菱UFJ銀行が大谷選手のウェブCMの一部を非公開としたため、「打ち切りではないか」と注目を集めている。企業のリスク管理に詳しい桜美林大学の西山守准教授は「銀行が神経質になるのは当然で、ウェブCMの公開終了を批判することは筋違いだ」という――。■大谷翔平を起用したCMはほとんどが継続

ドジャースの大谷翔平選手は、日本時間3月26日の朝、通訳の水原一平氏の違法賭博への関与疑惑での解雇を受けて会見を行い、声明を発表した。水原氏の賭博問題について、自身の関与を否定。大谷選手の口座から行われたブックメーカーへの送金についても、関与を否定した。

産経新聞の報道によると、大谷選手を広告に起用している三菱UFJ銀行、寝具メーカーの西川、コーセー、セイコーウオッチは、継続起用することを表明しているという。

大谷選手を広告起用している企業は上記以外にもあるが、現時点で起用を打ち切るという動きは見られないし、打ち切る兆しも見られない。

しかしながら、水原氏の解雇が発表された直後の3月21日時点で、三菱UFJ銀行の「大谷選手特設サイト」にアップされているウェブCMの5本のうち、2本が非公開になっている事が判明している。三菱UFJ銀行側は、CM動画を非公開にしたのは、報道とは無関係だとしており、「1月末で契約期間満了に伴い削除していた」と説明している。

大谷選手の広告継続の判断はどのような基準でなされたのだろうか? 三菱UFJ銀行がCM動画を非公開にしたのは、本当に契約満了によるもので、このたびの事件とは無関係なのだろうか?

単純化して言えば、広告契約の継続の有無は、「リスクとリターンのバランスで決まる」ということになる。つまり、継続することで得られるリターン(利益)より、続けることのリスクの方が大きくなれば打ち切られるし、そうでなければ継続されるということだ。

しかしながら、リスクを見積もることは難しいし、起用によるリターン(利益)も正確に見積もることは難しい。

■広告契約の継続/打ち切りの基準は 「属人的」

まずは、一般的な視点から説明しておきたい。広告に起用している人物にある問題が起きた時、複数の要素を検討して総合的に判断する。しかしながら、それぞれの検討要素について、明確な判断基準があるわけではない。

起用されるタレントやアスリートは一人の人間(グループのこともあるが)であるし、広告を見て影響を受けるのも人である。人が主体になるだけに、判断基準も非常に“属人的”なものにならざるを得ない。

主な検討要素として、下記のようなものが挙げられる。

1. 起用されているタレントやアスリートの人気やイメージ2. 起きた問題の重要性、深刻さ3. 起きた問題の企業、商品への影響(イメージや売り上げ等)4. 広告主(スポンサー)の意識や意向5. 広告の対象となる業界、企業、商品・サービスの特性6. 商品やサービス、あるいは広告メッセージと、起用されているタレントやアスリートとの相性や親和性7. 契約金や契約条件■「誰が起こしたか」によって判断は異なる

同じ問題を起こしたとしても、「誰が起こしたか?」によって判断は異なる。

例えば、同じ不倫でも、若い女性アイドルが起こしたら取り下げになるが、高齢の男性タレントなら取り下げにならないということもある。一見すると公正でないように思えるが、ファンや視聴者に与える印象という点からみると、合理的な判断をしているとも言える。

もちろん、起きた問題の大きさや内容も重要だ。

交通事故を起こしたケースについて考えてみよう。

事故の大きさはどの程度か、被害者はいるのか、いるとすると被害の大きさはどのくらいなのか――といったことによって、判断は左右される。

どの業界、どの企業、どの商品の広告に出ているのかといったことも重要だ。一般的に、官公庁や自治体、育児・教育関連、インフラ系などの公共性の高い事業者は、不祥事に厳しい傾向にある。

起きた問題と、広告している企業、商品・サービス、広告メッセージとの関係も重要だ。

例えば、自動車メーカーの広告に出ているタレントが自動車事故を起こしたといった場合は、問題になりやすい。

市川猿之助氏が両親への自殺幇助の容疑で逮捕された際には、彼が起用された警察庁の「親を想う気持ちが、詐欺を防ぐ」というキャッチコピーの広告が(悪い意味で)話題になってしまった。市川猿之助氏の件は、問答無用で広告は取り下げになるレベルの辞退だったが、広告で発信しているメッセージと矛盾するような行為を起こされると、不祥事が軽微だったとしても取り下げになりやすくなる。

■大谷翔平のCM継続は正しかった

交通事故の例に話を戻すと、広告に起用されているタレントが交通事故を起こしたが、運転していたのは友人だったという場合はどうだろう?

その友人が飲酒をしていた疑惑がある場合は?

友人の飲酒を知っていた可能性がある場合は?

そもそも、友人が運転していたという事実は間違いがないのか?

事実がどうであるかによって判断は異なってくる。しかし、真実は明らかになっていない。現在の大谷選手の状況も、これに似ているといえる。

以上で見てきたように、広告起用を継続する/しないの判断は、複数の要素が相互に絡み合っているので、個々の案件の事情を踏まえて総合的に判断するしかない。

では、大谷選手の場合はどうなるのだろうか?

結論から言えば、現時点で大谷選手の広告を取り下げる必要はないし、取り下げたほうがリスクは高いので、継続のは妥当な選択であったと言える。また、大谷選手の3月26日の声明発表は、大谷選手を起用している企業に安心材料を与えたと思う。

■松本人志、成田悠輔はスポンサー自粛、降板

企業のコンプライアンス意識が高まる近年、広告に起用されるタレントにも素行の良さがより厳しく求められている。加えて、昨年にジャニー喜多川氏の性加害問題が社会問題になって以降、疑惑の段階で広告が下げられるという現象も見られるようになった。

松本人志氏の性加害疑惑において、早々にテレビ番組のスポンサーがスポンサー表示を自粛した。また、キリンビール「氷結」の広告に起用されている経済学者・成田悠輔氏が過去の「不適切発言」を掘り起こされて批判が起き、広告が取り下げになった。こうしたことは、数年前であれば起きなかったのではないかと思う。

そうした状況にはあるが、水原一平氏の発言と、大谷選手の声明は矛盾するものではない。まだ明らかにはなっていないことが多々あるとはいえ、大谷選手は捜査に全面的に協力するという発言もしている。

大谷選手はスーパースターであるだけでなく、スキャンダルもほとんどなく、品行方正であるというイメージも強い。名門ドジャースに移籍し、結婚報告もあって祝賀ムードの最中にあった。そうした中での問題発覚は衝撃も大きかったのだが、現時点では大谷選手のイメージを崩すまでには至っていない。

メディアやネットでの論調を見ていても、多様な意見はあれど、「大谷選手は清廉潔白だ」「大谷選手の声明の内容は正しい」とする(あるいはそう思いたい)意見が大勢を占めている。加えて、大谷選手に対して「この問題に手を煩わせることなく、野球に集中してほしい」という思いも強い。

企業側としても「疑問は残るが、大谷選手を信用して広告起用は継続して様子を見よう」という判断を下しているのだろうし、取り下げることで批判を浴びるリスクも重々に承知しているものと思われる。

■「新たな疑惑」で風向きは一変する

捜査を行う警察当局やMLB側は、大谷選手のイメージがどうというのは関係なく、大谷選手の関与も含めて、あらゆる可能性を想定して事実がどうであったかを客観的、中立的に調べることになる。

大谷選手側の声明に矛盾する事実が発覚したり、新たな疑惑が出てきたりすると、世論が一瞬にして反転してしまう可能性もある。まさに、水原一平氏が直面したのと同じことが、大谷選手の身にも起こってしまうことになりかねないのだ。

誰もが賞賛するスーパースターで、イメージも良い好青年からこそ、多くの企業が多額のお金を費やして大谷選手と広告契約をしているのだ。何かが起きると、一気に風向きが打ち切りへと変わってしまいかねない。

■「契約満了」は便利な言い訳になる

三菱UFJ銀行の一部のウェブCM動画が非公開になった話題に戻すが、これは本当に「契約満了」によるものなのかという疑問は拭えない。

結論から言うと、契約満了の可能性もあるが、今回の事件による影響の可能性も少なからずあると思う。

出演タレントに不祥事が起きた後の広告の取り下げに対して、「契約期間の終了により」という説明なされることは少なからずある。

契約内容は、当事者と契約主体の法務担当くらいしか知り得ない(第三者が知り得たら問題になる)。したがって、この説明が正しいか否かは、メディアも一般人も知りようがない。メディアから追及されても「個別の契約内容については答えられない」と答えれば済む話だ。

つまり、不祥事を起こしたタレントの広告契約を終了する際に、「契約の終了」は批判を回避するための便利な言い訳になるのだ。これはウソだとしても、タレントを含めて、誰も傷つけないためのウソであるから、それを責めることが適切とも言えないだろう。

一方で、契約終了のタイミングで、たまたまタレントが不祥事を起こしてしまうということも実際に起こる。

筆者が体験した事例でも、あるタレントが広告契約を終了することになっていたが、その直後にちょっとした(広告を取り下げるほどでもない)トラブルに巻き込まれたことがあった。「契約終了はタレントのトラブルによるものではないか?」という憶測を生み、企業やタレントが叩かれるのではないか――という懸念が生じてしまった。

■「ウェブCMの公開終了」を批判するのは筋違い

三菱UFJ銀行の件は、どちらのケースも考えられる。ただ、銀行口座から窃盗が行われた、不適切な相手に入金が行われていたという事実は、三菱UFJ銀行としては非常に気になるところだろう。

非公開になったCM動画が「大谷翔平選手がアプリで口座開設に挑戦!」「大谷翔平選手がアプリで銀行振込に挑戦!」という内容で、事件発覚の直後にこの2本が非公開になったというのは、タイミングが良すぎる(悪すぎる?)と思われてもやむを得ないだろう。

いずれにしても、お金そのものを扱い、セキュリティーを重視する銀行が、この事件に神経質になることは当然のことであり、ウェブCMの公開終了を批判することは筋違いである。

今後、どのような事実が明らかになるのかは、今の時点ではわからない。ただ、大谷選手を広告起用している企業の中で、本件に最も神経質になっているのが三菱UFJ銀行であろうし、今後も三菱UFJ銀行が先行して先行して判断を行うことになると思われる。

他社がその判断に追随するかは、各社の個別の判断になるだろうが、少なからず三菱UFJ銀行の動向は影響を与えるだろう。

■「今後もCM継続」とは断定できない

では、今後も大谷選手の広告起用が継続されるかといえば、そうとも言い難い。

大谷選手自身が違法賭博を行っていなかったとしても、借金の返済を肩代わりしていた、あるいは水原氏の入金の事実を知っていたという事実が改めて明らかになった場合は、再検討がされることになるはずだ。セキュリティ、コンプライアンスを重視する企業にとって、大谷選手起用の継続がイメージ低下につながらないかという点から、判断がなれることになるだろう。

この問題が早々に片付いて、企業側も落ち着いて広告・宣伝活動が行えるようになることを願いたい。

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西山 守(にしやま・まもる)
マーケティングコンサルタント、桜美林大学ビジネスマネジメント学群准教授
1971年、鳥取県生まれ。大手広告会社に19年勤務。その後、マーケティングコンサルタントとして独立。2021年4月より桜美林大学ビジネスマネジメント学群准教授に就任。「東洋経済オンラインアワード2023」ニューウェーブ賞受賞。テレビ出演、メディア取材多数。著書に単著『話題を生み出す「しくみ」のつくり方』(宣伝会議)、共著『炎上に負けないクチコミ活用マーケティング』(彩流社)などがある。
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(マーケティングコンサルタント、桜美林大学ビジネスマネジメント学群准教授 西山 守)

]...以下引用元参照
引用元:https://news.nifty.com//article/magazine/12179-2911523/

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