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地球上でいま風前の灯となっている生命を未来に“復活”させるという、知られざる取り組みの最前線を追いました。
■緊急通報で現場へ!“絶滅危機”ワシを救う
それは、彼にとって1年3か月ぶりの大空でした…。翼を広げると2メートルを超える、絶滅危惧種『オジロワシ』。
このとき、彼は交通事故にあい、瀕死の重傷を負っていました。回復に携わったのが、齊藤慶輔さんら獣医師たち…30年に渡って絶滅危惧種の保護・治療などを行ってきました。
(猛禽類医学研究所代表齊藤慶輔獣医師)「よし行け!行け!!」
「『頑張れよ、戻ってくるなよ』という気持ちも勿論ありますけれども『あぁ良かった!野生に戻すことができた』これが一番最初ですね」
冬のこの時期、北海道には越冬のため、ロシアから『オオワシ』や『オジロワシ』がやってきます。広げた翼が2.5メートルにもなる日本最大の猛禽類『オオワシ』は、世界に5000羽ほどしかいないと推定されています。さらに近年では数が減少。絶滅が危ぶまれているのです。
釧路市にある『釧路湿原野生生物保護センター』。齊藤さんが代表を務める『猛禽類医学研究所』は、この一角にありました。
「翼、折れてるんでしょ?」
「片翼が折れてるって。出血は不明です」
この日、道端で動けなくなっている『オオワシ』がいるという通報が入りました。
「明確なけがは分からないということなんだよね」
(猛禽類医学研究所河野晴子獣医師)「ちょうどここの骨なんですけど、折れていますね」
診察すると、詳細がわかってきました。
(猛禽類医学研究所副代表渡辺有希子獣医師)「収容場所としては道路際と聞いていますので、おそらく交通事故、筋肉もだいぶ切断されてしまっているので、整復(元にもどす)は難しいかもしれませんね」
この目が訴えているのは、私たち人間への“無言の抗議”なのでしょうか?…傷ついたワシの収容が後を絶ちません。
■“絶滅危機”の意外な原因発信機を追うと
原因が分かっている中で多いのは車や列車との衝突事故。なぜ、事故は起きるのでしょうか?
「発信機の写真撮ってくれる?」
齊藤さんはワシの行動を調べるため、負担にならない程度の発信機をつけ、行動エリアを分析しています。すると、こんな事が分かってきました。
「赤」で示されているのが、1羽の「ワシの移動軌跡」。白いラインは「線路」です。ワシは線路に沿って行動していたのです。
列車に乗ってみると、線路脇に多くのワシが群がって何かを食べていました。死んだエゾシカです。
(齊藤慶輔獣医師)「ワシたちはここに餌があることをしっかりと認識して利用しているんですよね。そこに陣取って、シカが(列車に)ひかれるのを待っている。(餌に)集着するあまり列車の接近に気がつくのが遅れてぶつかってしまう」
鉄道会社では、線路にシカが入らないよう、柵などを設置しているものの、根本的な解決には至っていないのです。
■絶滅危機のワシ時空を超えて“復活”も期待
施設にある冷凍保管室。列車との衝突事故は死に繋がるケースが多く、齊藤さんたちは、命を落としたワシたちを役立てようと、その一部を、ある研究機関に送っています。それは遠く、茨城県つくば市にありました。国立環境研究所・環境試料タイムカプセル棟。銀色に輝くカプセルが所狭しと並ぶ、生物多様性を守る、最先端の研究施設です。
(国立環境研究所生物多様性領域大沼学主幹研究員)「このタンクの中には、絶滅危惧種の培養細胞ですとか、生殖細胞、精子、卵子、臓器を細かく切ったものが凍結保存されています」
それはまさに、現代版“ノアの方舟”。こちらの施設では、死んでしまった絶滅危惧種から、皮膚などの一部を取り出し、細胞を培養。-160℃に凍結保存しています。その種類は「トキ」や「イリオモテヤマネコ」など130種あまり。
これは解凍後、再び動きだした「ヤンバルクイナ」の生殖細胞。こうした細胞は、生きた個体では実験できない絶滅危惧種の感染評価などに役立っています。さらに期待されているのは、絶滅危惧種の復活です。
(大沼学主幹研究員)「人工授精は試みています。残念ながら、“個体”は産まれていないんですけれども」
こうしたなか、大沼さんたちは、生物多様性豊かな北海道に保存設備の設置を計画。絶滅危惧種の復活にも繋がると、期待が高まっています。
(大沼学主幹研究員)「(北海道にあると)移動距離が短いので、新鮮な状態で試料(細胞)が保存できる。今後、新たな技術が開発された場合にこのタンクというのは(絶滅危惧種の)最後のとりででもあるし、保険として意味のある施設になります」
■近年増加“事故の瞬間”絶滅危機を救え
保護の現場でも、新たな試みが始まっていました。近年、ワシの事故で増えてきているのが、風力発電の風車との衝突、いわゆる“バードストライク”です。その瞬間をとらえた映像。回転する風車に近づくワシ、そして…
(齊藤慶輔獣医師)「大型の風車になりますと、ブレードの先端速度が(時速)300キロぐらいに達しますから、翼がもぎ取られたり、胴体が真っ二つになったり、ほとんどの場合は死亡事故ですね。即死が多いです」
環境省によると、これまでワシのバードストライクはおよそ80件。電力会社も適切な場所に施設を配置するなど対策を進めていますが、事故は後を絶たないのが現状です。こうしたことから齊藤さんは、環境省や民間企業と共に、ワシが衝突しにくいと思われるモデルを開発。けがで野生に戻れなくなったワシたちがいるケージに設置して、実験を行っています。
(齊藤慶輔獣医師)「一緒のケージに置くことによって、実際の被害者(ワシ)に検証してもらって、どういう行動をとるのか、今のところは近寄ってきたり、興味津々で飛び乗ったり、そういうことはないという第一段階はクリアしています」
「これがバードチェッカーというもので…」
これまでも高圧電線での感電防止器具や、車との衝突事故対策を考案してきた齊藤さん。そこには、こんな想いがありました。
(齊藤慶輔獣医師)「人間が引き起こしてしまっている事故であれば、事故を起こさせない。これが人間としての責任だと思うんですよね。病んでしまった環境を治すという意味合いから“環境治療”という言葉を作って環境を治していく。動物ファーストでも人間ファーストでもなくて、人間は彼ら動物の生活、存在をきちっとリスぺクトしながら、どうやったらより良い共生ができるか、それを考えていくべきだと思います」
2月4日『サンデーステーション』より
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp
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