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■世界初!「ピンポイント着陸」支えた鋳物企業
SLIMプロジェクトマネージャー 坂井真一郎氏
「新しい扉をもしかしたら自分たちは開いたのかもしれない」
日本初の月面着陸に挑戦した無人探査機スリム。目標の誤差わずか55メートルの「ピンポイント着陸」に成功しました。
世界初の快挙を支えた企業が、神奈川県小田原市にあります。「コイワイ」は、金属を溶かし、型に入れ固めて作る鋳物製品などを手掛ける企業。最新技術を使い自動車パーツ、医療部品などの試作・開発も行っています。
コイワイ 専務取締役 小岩井修二
「この装置がSLIMの部品を作った、金属積層装置になります」
「(Q.まさにこれで作られたと)そうです」
こちらがその試作品。着陸時に潰れることで衝撃を吸収し、機体を守る役割があります。
コイワイ 専務取締役 小岩井修二
「(Q.ちょっとよろしいですか。軽いですね。何でできているんですか)アルミニウムです。一番大きい衝撃をここで吸収し、倒れるような姿勢になります。倒れた時に4つの脚で支える、2段階着陸というシステムになっています」
スポンジ状の構造が潰れることにより、着陸の衝撃を吸収する仕組みです。JAXAの依頼で始めた共同研究。完成するまで3年の月日がかかりました。
グループ会社の技術者は。
日本積層造形 製造部課長 栗田健也さん
「(Q.どのくらい結局試した)試した数としては数十、数百。うまく機能してくれてまずはよかったなと」
日本積層造形 代表取締役社長 大竹卓也さん
「(Q.3Dプリンターで、どうやって作っていくんですか?)まさに1層1層ですね(金属を)焼き固めて行くことを続けてきます」
「(Q.こうやって出来上がっていくんですね。ミルクレープみたいな)そうですね。1層1層」
これは出力を終えたばかりの製品映像。粉末を除去していくと見えてきたのが…。こんな複雑な形状でも作ることが可能です。
技術者の監視の下“リモートで”製品を製造することも可能です。
日本積層造形 代表取締役社長 大竹卓也さん
「将来的には月の砂を使って、向こうに(月)置いた装置で造形するっていう時代も来る」
■「腰が抜けそうに」おもちゃから月面探査ロボ
SLIMプロジェクトネージャー 坂井真一郎氏
「あの画を見た瞬間、私は腰が抜けそうになった」
宇宙の専門家も驚かせた月面着陸の決定的瞬間。カメラマンは日本初の月面探査ロボット。その愛称はSORA-Q(ソラキュー)です。
手掛けたのは2月2日に創業100年を迎える、おもちゃメーカー「タカラトミー」。
野球のボールほどの大きさにおもちゃの「技術」と、「アイディア」が詰め込まれていたのです。
スリムに搭載されたSORA−Qは、着陸直前に球体のまま放出されます。
タカラトミー 「SORA−Q」プロジェクトリーダー 赤木謙介さん
「月面に降り立ったSORA−Qは、最初に“変形”をします」
そして、月面では2つの走行が可能です。
タカラトミー 「SORA−Q」プロジェクトリーダー 赤木謙介さん
「両方の車輪が同時に動く、水泳のバタフライのような、動きをしている『バタフライ走行』となります。この2つの車輪を独立で動かすことによって向きを変えたり、交互に車輪を前に出すことによって『クロール走行』をすることもできます」
尻尾にみえる部分にも意味があります。転がってしまったり、内臓するカメラが隠れないように、バランスを取ります。
タカラトミー 「SORA−Q」プロジェクトリーダー 赤木謙介さん
「月面は誰かが整地したわけではないのでデコボコしているだろうと。坂道があっても、そこを乗り越えられるような、動き方、形が必要だと」
そこで参考にしたのがウミガメでした。
タカラトミー 「SORA−Q」プロジェクトリーダー 赤木謙介さん
「ウミガメが卵を砂浜で生んで、その後、ちょっと掘ったところから出てきて、また海に戻る」
ゼンマイやモーターなどで、生き物のような動きができるおもちゃもヒントになりました。
タカラトミー 「SORA−Q」プロジェクトリーダー 赤木謙介さん
「中心よりも少しずらしたところに軸を設け動かすことによって、1回1回、タイヤが回転するごとに、本体が上に、乗り上がるような動きをする」
そのノウハウが生かされ、15度以上の傾斜でも上ることが可能になったといいます。
2016年からJAXAと共同研究を始めたタカラトミー。最大の課題が小型軽量化でした。
タカラトミー 「SORA−Q」プロジェクトリーダー 赤木謙介さん
「(JAXAから)8センチ×8センチ。四角の中に収まるサイズでロボットを開発したい重さ300グラムよりも軽いものを作りたいと」
開発のヒントとなったのが乗り物から人型ロボットに変形するおもちゃでした。
タカラトミー 「SORA−Q」プロジェクトリーダー 赤木謙介さん
「完全変形という技術的に持っていまして、変形の前後で、パーツが変わらないということを技術として持っております」
“球体”の状態で内部のカメラを保護。変形後はそのボディが車輪に。1つのパーツに2つの役割を持たせる「アイデア」と「技術」で部品を減らし軽量化につなげました。
タカラトミー 「SORA−Q」プロジェクトリーダー 赤木謙介さん
「(JAXAは)非常にユニークで面白がっていただいてもっとそのおもちゃの技術を出してほしいと」
愛称であるSORA-Qには子どもたちに向け大切なメッセージを込めたと言います。
タカラトミー 「SORA−Q」プロジェクトリーダー 赤木謙介さん
「SORAは“宇宙の空”。Qは“クエスチョン”という意味。(子どもたちに)宇宙に対して疑問を持ってほしい。宇宙の素晴らしさ、面白さ、そこへの挑戦っていうことも、醍醐味を伝えていくことが今の私たちに任せられた使命ではないかなというふうに思っています」
(サンデーLIVE!! 2024年1月28日OA)
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