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◆「窓がクモの巣状に」架線トラブル
上野-大宮間で新幹線が停止したのは、午前10時ごろのことでした。それから3時間近くが経過したころ、非常階段を伝って乗客たちが続々と降りてきました。一体何が起きていたのか話を聞いてみると…。
乗客
「ガタンガタンガタンと結構大きい音がして、響いて。あらどうしたんだろうって。地震経験してるもんだから、また地震かなと思って。そのうち電気がバッと消えて。はしごで降りるなんて思ってもみなかった。びっくりしました」
乗客
「私の座っている窓のところが、クモの巣状に割れました。(Q.ガラスの破片が飛んだりは)二重の窓の外側だけ割れている感じ」
乗客
「結構、衝撃というか。あ、事故だってすぐ分かる感じ。車体が斜めの状態のまま、すぐ停電になって。その状態がずっと降りるまで続いている状態でした」
JR東日本が原因を探ると、架線が地面のあたりまで垂れ下がっていたことが分かりました。現場となった上野-大宮間は、東北・北海道・秋田・山形・上越・北陸の各新幹線が通る、まさに要衝中の要衝です。一部が上下線で一時運転見合わせとなり、影響は各地に広がりました。その後、再開したところがあるものの、仙台と高崎から南は終日見合わせとなりました。
◆復旧作業員2人が感電 やけど
急がれる運転再開。その最中に新たな事態が発生しました。
周辺住民
「ドン、バーンっていう音がして。機械か何かが燃えていると思った。そしたら人が燃えていて。係員がペットボトルか何かで水をかけていて、周りの人は近寄らないように離れていた。人だと思って撮るのをやめた」
周辺住民
「その方を助けようとして、他の方が歩み寄って助けようとしたが、その方ももらい火をしてしまって。『救急車』と周りの人が叫んでいた」
JR東日本などによると、協力会社の社員1人が感電し、もう1人もやけどを負ったといいます。感電した1人は重傷です。
◆東北・上越・北陸「3路線」運休
東京から北へ向かう新幹線が、軒並み運転見合わせという事態。みどりの窓口には行列ができていました。
女性
「金沢に帰るんです。東海道新幹線の米原経由で帰ろうと思って、切符を買い直す」
仙台駅では、大勢の人が改札の前で立ち尽くしていました。駅員は乗客の対応に追われています。どうしたら目的地へたどり着けるのか。途方に暮れている家族がいました。
東京へ家族旅行予定 母親
「きょうは子どもたちと原宿に行って、ディズニーシーに行って、次の日ディズニーランドに行く予定だったんですけど。新幹線が動かないので、子連れでどうやって移動したらいいか」
子どもにとっては、ショックが大きすぎたようです。
東京へ家族旅行予定 子ども
「東京の原宿ってところと、ディズニーランドに行きたかった」
東京-長野間で一時、運転を見合わせた北陸新幹線。移動できる見通しが立たず、子どもはぐったりです。
オーストラリアから来た人
「京都に向かいます。長い旅になりそうです。数日間、スキーをやって過ごしたので、とても疲れています。大変な1日になりそうです」
長野から東京へ向かう人
「1~2時間待って動くなら待っているんですが、その見込みがないのであれば、待っていてもしょうがないかなと。元々、長野駅まで車で来たので、車で東京までもう行くしかないかな」
◆能登半島地震 支援にも影響
北陸新幹線の終点、金沢駅。能登半島地震で支援にあたっていた人も影響を受けました。
千葉市職員
「輪島に行かせてもらっていて。1週間、災害の関係で対応して、きょう帰るところでした。仕方ないので迂回(うかい)して帰る方向で考えています」
◆パンタグラフが破損 なぜ?
鉄道の大動脈を混乱に至らしめた原因は何だったのか。現場の映像を見てみると、架線を釣る金具が斜めの方向を向いているのが分かります。こうした損傷が複数あるといいます。さらに、停止している電車の屋根が損傷しているのが分かります。パンタグラフも曲がっています。
並走する埼京線から撮影された画像には、破損したパンタグラフらしきパーツが落ちているのが確認できます。窓ガラスにひびが入ったのは、パンタグラフが当たったためという可能性があります。
乗客
「外を見ていたら、上からポールのような細長いものと、それに付属した何か物体が落ちてくるなと思って。そのあとにカシャンと音がしてという感じです。窓に当たったところまでは見ていないんですけど、何か落ちてくるなという感じで。一瞬でしたけど。(Q.気付いたら窓が割れてた)はい」
◆『架線』垂れ下がりが原因か
架線は、電気が流れる『トロリー線』を上からつっていて、電化柱と架線金具でつなげています。このトロリー線からパンタグラフを通して電気を供給し、車両を動かしています。
JR東日本によると、北陸新幹線のパンタグラフや窓ガラス、架線金具で損傷が確認されたということです。
JR東日本は原因について、これから詳細に調べるとしたうえで、現時点の見立てとしては「架線が何らかの原因で垂れ下がり、そこに新幹線が入ってきて、金具を損傷させたのでは」としています。
JR東日本で線路の保守や安全管理の業務に携わり、現在は、交通計画のコンサルティング会社『ライトレール』社長の、阿部等さんに聞きます。
(Q.事故の原因は何だとみていますか)
阿部等さん
「何らかの原因で、つるしていた架線が垂れ下がっているところに、列車が入ってきて、パンタグラフが壊れてしまったと。この種の事故は、電気鉄道が生まれてから、世界中で繰り返し起きています。日本では昭和26年の桜木町事故がありました。桜木町駅で、作業ミスで架線が垂れ下がっているところに、列車が入ってしまいました。そのころの列車は木製で、火災になり、100人以上が亡くなりました」
(Q.事前に気付くことはできなかったのでしょうか)
阿部等さん
「架線が切れていれば、電気が途絶えて、非常ブレーキが自動的にかかります。ただ今回は、架線が切れていたわけではなかったので、非常ブレーキがかからなかったのかもしれません。(架線が地面についていれば)異常電流が流れるので、それも察知できますが、そこまで垂れ下がらなかった可能性があります」
◆影響は「3路線」に波及
(Q.この事故の影響は、広範囲にわたっています。大宮駅から折り返し運転にしていれば、影響を抑えられたのではないでしょうか)
阿部等さん
「トラブルが起きたのは大宮駅の南ですから、大宮から北は何も起きていません。電気設備は長い区間を一括で管理するので、大宮駅に電気を流せなくなっている可能性もありますが、それは直せばできる話です。大宮駅から北側を運行すれば、大宮から東京は京浜東北線などが走っているので、ここまで影響が広がることはないのになと。次回からは大宮駅での折り返しがスムーズにできるようになってほしいと思います」
◆“復旧”最中にも事故…なぜ?
この事故に関連し、作業員が感電する事故が起きました。JR東日本によると、「他の電車を動かすために電気を流した。通常なら、停電させてから作業しなければならなかったのに、停電させていなかったので感電した。現場の連絡状況については、今後調査する」としています。
(Q.こうした事故は起こり得ることですか)
阿部等さん
「新幹線の架線には、2万5000ボルトの高電圧が流れているので、触らなくても、近付くだけで感電してしまいます。想像ですが、下り線側に3本止まったので、恐らくそれを動かすために流した。その連絡がどこかで滞り、作業員が感電してしまった可能性があります」
(Q.今後の対策にはどういったことが求められますか)
阿部等さん
「電流が流れている所では作業をしないための、チェック体制。羽田空港での事故もそうですが、人間の伝達だと、どうしても伝達ミスや聞き間違いが起きてしまいます。チェックをしっかりというのはありますが、ゼロにするのはなかなか難しい。今回をきっかけにより万全な対策が取れるはずです」
(Q.今回の事故で反省すべき点、考えるべき点はたくさんありそうですね)
阿部等さん
「東海道新幹線で10年前、有楽町で火災があった時に、品川から向こうで運転すれば問題なかったのに、東京-博多間が丸一日止まってしまいました。次回からはそうならないように、鉄道業界に頑張ってほしいと思います」
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp
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