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「衝突までの猶予は20数秒」【羽田炎上事故】複数パイロットが証言“JAL機はなぜ海保機に気づかなかったのか”
2024年1月17日(水)6時0分 女性自身
1月2日17時47分ごろに羽田空港で起きたJAL機と海上保安庁航空機の衝突・炎上事故は、海保機の乗員5人が亡くなる大惨事に誰もが胸を痛め、冥福を祈った。
同時に、JAL機の乗客乗員379人の全員が脱出できたことには、14人の負傷者が出たとはいえ、日本中が胸をなでおろしたことだろう。
その後、国土交通省・運輸安全委員会、JALが聞き取りを始め、警視庁は業務上過失致死傷容疑で現場検証や調査に入った。
現在までの国交省やJALへの取材報告をまとめれば、まず海保機が、管制からの《「ナンバーワン。C5上の滑走路(手前の)停止位置まで地上走行してください」》(1月9日、TBS NEWS DIG)という指示に対し《「滑走路への進入許可」だと誤って認識》(同)して滑走路に進入した可能性が指摘されている。
そのまま《約40秒にわたって滑走路上で停止していた》(1月5日、読売新聞オンライン)ことが、当時の映像やデータで判明している。
一方で管制は、滑走路への海保機の進入を検知した監視システムの画面が赤色に切り替わったことを《管制官は見落とした可能性がある》(1月8日、産経新聞)
他方、JAL機のコクピットにいたパイロット3人は、約40秒の間、進路である滑走路上に停止していた海保機を《「視認できなかった」と話していることがわかったほか、「衝突直前に一瞬、何か横切ったような違和感をおぼえた」と話すパイロットもいた》(1月4日、ANN NEWS)という。
しかしその後のJALの聞き取りには《「他の航空機への離陸許可の通信はなく、着陸に集中できる状態だった……滑走路に異常はなかった」とも話した》(1月12日、日テレNEWS)とされる。
さらに《JAL機パイロットに同社が聞き取った内容をまとめた文書》を入手したという毎日新聞は1月14日、パイロットが《「着陸まで滑走路上に異常は感じなかった」と証言》《「通常通りに着陸した直後に一瞬何かが見え、強い衝撃があった」と説明》と報じている。
ところで、事故の原因究明に欠かせないボイスレコーダーとフライトレコーダーは、海保機からは1月3日に回収されたが、JAL機は《フライトレコーダーを3日に回収》(1月5日、ロイター)、ボイスレコーダーは《6日行われた機体の撤去作業の際》(1月6日、TBS NEWS DIG)になってようやく回収されている。
なぜこのように痛ましい事故が起きたのかは、海保機、管制、JAL機のやり取りやボイスレコーダーなどの調査・解析から原因究明されるのを待つしかないが、私たちにとって、この3者で最も近い存在は、乗客として利用することがあるJAL機だろう。
JAL機のパイロットは約40秒の間、滑走路上で停止していた、進路上の障害物となる海保機を「視認できなかった」と話している。
日本経済新聞1月9日ウェブ公開「検証・羽田空港衝突事故」によれば、海保機が滑走路上に停止した衝突40秒前、JAL機は2.3キロの距離まで迫っていたことが、航跡データやライブカメラの記録でわかる。高度は約84メートル、速度は毎時224キロだった。
つまり衝突地点から2キロ以上も離れた上空を飛行していたJAL機が、それから40秒近く、進行方向に停止している障害物を発見できなかった可能性があるのだ。
事故発生は18時前と夜間の出来事だった。
本誌は緊急に、2人のパイロット(現役、OB)にコンタクトを取り、話を聞いた。
■JAL機パイロットはなぜ海保機を「視認できなかった」のか?
「今回の事故では、海保機が滑走路に進入した時点で、JAL機が滑走路からどれくらい離れていたのかが、焦点になると思います。
報道では、衝突までの約40秒間、滑走路上で海保機が停止していたとありますが、航空機が着陸前に滑走路上の物体に気づくとすれば、かなり低高度になってからが現実的です」
こう話すのは、現役パイロットだ。
前述の通り、衝突40秒前の時点でJAL機の位置は高度約84メートルで、衝突地点まで2.3キロの距離だったとされているが、現役パイロットの言う「低高度」とはどれくらいの位置のことなのだろうか?
「たとえば、高度でいえば約60メートルで、滑走路から約1.2キロの距離です。この着陸まで約20秒の位置でしたら、物体に気づくかもしれません」
JAL機は着陸後、数秒間、地上走行しているうちに衝突したことがビデオ映像で確認できるため、現役パイロットが示す「着陸まで約20秒」に数秒を足すと、衝突までの猶予は20数秒ということになる。
しかし前述した毎日新聞の14日の報道では《パイロットは「通常通りに着陸した直後に一瞬何かが見え、強い衝撃があった」と説明》とある。
現役パイロットが話を続ける。
「パイロットは、訓練でもそうですが、スルスルと滑走路に入ってくる航空機や動いている物体には気づきやすい。しかし、動かないものにはかなり気づきにくいのは事実です」
つまり、現役パイロットの言う「衝突20数秒前」の「JAL機が海保機に気づくチャンス」時点では、海保機は「40秒間停止」していた最中であり、「動かないものにはかなり気づきにくい」というのが現場経験による実感のようなのだ。
パイロットに昇格するには数年単位の訓練期間と厳しい試験の突破が必須だが、昇格後も半年に一度の集中訓練や審査がある。
「滑走路上にほかの航空機などがないかどうかの確認は、初歩の訓練時から強調されているものです。半年に一度の訓練や審査では、毎回、『ゴーアラウンド』(=着陸を中断し再び上昇すること)の訓練も行っています」
そのような厳しい訓練によって、パイロットはゴーアラウンドの技術を身につけている。
加えて、航空機には両翼や尾翼にビーコンライト、ストロボライトなどというライトを日没以降、日の出までは点灯させることが法律で義務づけられている。
これが滑走路上で光っていれば、今回の事故時のように夜間でも、気づくことは可能なのではないか?
「ところが、夜間は機体のライト以外に、種々の滑走路のライトが点灯しています。そのライトの中に当該機のライトが溶け込んでしまうような状況では、なかなか見えづらいと思います」
さらには、「3人のパイロットがいるのだから、誰かが気づくはずでは?」という疑問に対しては……。
「パイロットには役割分担があり、PF(パイロットフライング)はおもに操作を担当し、PM(パイロットモニタリング)は管制との通信やコンピュータ入力など、おもにモニタリングを担当します。
この役割分担によっても、外部監視を行う頻度が変わってくるんです」
今回、いくつかの報道では、当該のJAL516便の機体である「エアバスA350」がコクピットで採用している「ヘッドアップディスプレイ」(=HUD)という装備が、海保機を視認しにくくさせていたのではないかという指摘もある。
「HUDは、半透過ガラスのようなものに飛行計器上の情報を映し出し、視線を外に向けたまま操縦できる装置です。
便利な装置のようですが、情報越しに外を見るため、外が見えにくいという状況ができるかもしれません。私は使用したことがないのですが……」
では、今回の事故で「衝突20数秒前の段階で海保機に気づいた」場合、JAL機はゴーアラウンドできたのだろうか?
「もしも衝突20数秒前の段階で滑走路上のライトに気づき、それが航空機のものであると認識できていれば、ゴーアラウンドは可能だったと思います」
そして現役パイロットは、「日中の天気がいい状態であれば、滑走路上の物体に気づきやすい」と話しつつも「今回のように夜間の場合は、気づくのはかなり難しいと思います」と話す。
一方「たとえ管制から『着陸OK』が出たとしても、パイロットは自分の目で滑走路上の最終確認をしなければいけない」と語るのは、元パイロットだ。
「着陸する滑走路に異常がないかの最終点検(=ラストクリアチャンス)は必須であり、パイロット自らの目視によって、滑走路上の侵入機に用心しなければいけません。
特に超過密で、管制ミスが発生するような要注意空港では、管制官の許可だけでなく、自らの目で確認が必要なのです」
やはり、半年に一度の訓練や審査では、夜間を想定して、滑走路内の侵入物への瞬時の対処が試されるという。
「夜間を想定したシミュレーターチェックでは、『着陸許可』が出た後に、突然、滑走路内に工事車両が侵入するなどの動きに対して、パイロット、あるいは被試験者は瞬時に対応して『ゴーアラウンド(=着陸を中断して上昇)』します」
ただし、訓練や審査の場合には、「この試験官は(トリックを)やりそうだな」などと、ある程度、予測して構えることができるそうで、「実際のフライトでは、夜間は非常に見えにくい状況にあるとは言えます」と元パイロット。
今回の事故のような、夜間で「見えにくい」状況でも侵入機を確実に視認するために、機が点灯させているライトを確認するのだという。
「夜間には、機体は必ず左翼端の赤色、右翼端の青色、および尾灯の白色を点灯させています。しかし、これらはタッチダウンゾーンライトの高輝度に紛れてしまって見えにくいことがある。
ですから最も頼りになるのは、機の胴体の上下に設置された赤色回転灯であるビーコンライト、あるいは両翼端の白色の閃光灯であるストロボライトです。これは着陸するコクピットから認知できるはずです」
ストロボライトは通常、滑走路内に進入する際「衝突防止」のために点灯するものだが、「今回の事故時に海保機のストロボライトが点灯していたかどうかは不明です」と元パイロット。
しかしそれでも「夜は滑走路が暗くて見えないから、海保機を視認できなかったのではないか」と結論するのは「極端です」と元パイロットはハッキリ言う。
「視認できなかった理由を『暗くて見えなかったから』とするのは言いすぎです。もちろん、『発見しにくかっただろう』とは思います。
しかし、パイロットの視力、もしくは夜間視力によっても、発見タイミングの差が出てくると思います」
すると、今回、JAL機が「視認できなかった」(JAL機パイロット証言、1月4日、ANN NEWS)のは、なぜなのだろうか?
「『なんでだろう?』と私も思います。たしかに夜間は、滑走路周辺のライトに溶け込んでしまって、発見できないことがあるかもしれない。しかし赤色回転灯であるビーコンライト、白色閃光灯であるストロボライトで多くのパイロットは気づけると思います。そして気づいたのであれば、パイロットの誰もがゴーアラウンドしたはず。
しかし、JAL機のパイロット3人とも『視認できなかった』というのであれば、『危険を感知していなかった状況』となってしまいます」
このように、自身の体験に基づく貴重な証言をしてくれたパイロット2人(現役、OB)の洞察をもってしても、事故当時のJAL機のコクピットがどのような状態であったかを完全に把握するまでは難しいようだ。
元パイロットは「海保機のライトが正常に点灯していたのであれば、JAL機のパイロットが海保機のビーコンライト、ストロボライトに気づいたか否かが、事故原因の究明の重要なポイントになると思います」と話す。
その「事故原因の究明」に不可欠なボイスレコーダーに関しては、乗員5人が亡くなった海保機からは事故翌日の1月3日に見つかっていた。
しかし1人の犠牲者も出さなかったJAL機からボイスレコーダーが回収されるまでには、その後3日間を要している。
運輸安全委員会などによる「正確な記録の保存・調査・分析」の報告が待たれる。
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]...以下引用元参照
引用元:https://news.biglobe.ne.jp/domestic/0117/joj_240117_3167037521.html