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◆戦争とバレエ“ロシアとの決別”
バレエのソリスト、ビクトリア・ズバリッチさん(30)。彼女のSNSをのぞけば、どれもバレエのことばかり。そんな彼女が今、思うこと…。
ズバリッチさん:「ほとんどのアーティストが、ロシアスタイルの伝統の中で教育を受けました。リビウやキーウのバレエ学校に、ロシアからバレエの先生が来ていました。ロシアの音楽・バレエ・演目・文化をウクライナに持ち込んだんです」
ズバリッチさんも、小さいころからロシアのバレエに親しんできた1人です。
ズバリッチさん:「なぜウクライナバレエはロシアバレエなのか。自分たちのバレエは持っていないのか。殺人の象徴となっている国の音楽で踊るのは、倫理的な面でとても難しい」
ウクライナでは今、ロシアのバレエと決別しようとする動きがあります。それは、ロシア音楽の演奏を“自粛”しようというもの。
ズバリッチさん:「娘が大きくなって、戦争の恐怖がなくなって、バレエ・アーティストの道を選んだ時は、全く違うバレエであってほしい。私の夢は、ウクライナバレエが、他の国のバレエと肩を並べることです」
娘のルキアちゃんは今、3歳。彼女のためにも、新しいバレエをつくりたいと考えています。
ロシアの作曲家、チャイコフスキーによる『くるみ割り人形』は、クリスマスシーズン恒例の作品です。世界の多くの都市で公演が行われていますが、ウクライナのバレエ団が演じることはありません。
ウクライナとロシアのつながりが次々と壊されています。被害を受けた歴史的な遺産は800以上。これまでの文化が破壊され、姿を失っています。
◆「バレエを通して母国を守る」
ウクライナにある国立歌劇場。そのひとつが、東部の街ハルキウにあります。ここに、バレエ団の姿はありません。ウクライナの隣国スロバキア。活動を続けたいと、バレエ団のほぼ全員が避難してきました。愛犬ラキと、一緒に避難したラスカルデフスキーさんです。
ハルキウ国立歌劇場 エドゥアルド・ラスカルデフスキーさん(26):「犬だけを連れて避難しました。行くあてもなく、リビウに向かいました。電車が満員で連結部にいました。彼女はよく耐えていました。この状況を理解していました」「どこに行くのか不安でした。生き残ることしか頭になくて、バレエのことなんて考えもしませんでした。でもバレエ以外に何がある?人生の大半はバレエでした」
ハルキウ国立歌劇場・芸術監督 アントニーナ・パシリエワさん(41):「信念を持ち続けています。トレーニングを続けなければ“いつかは終わる”という気持ちを失ってしまう。存在を忘れさせてはいけない。私たちは芸術の最前線で闘っています」
レッスン場の隣の部屋には、劇場から届いた衣装があります。
ハルキウ国立歌劇場 ゴバル・ナザリィさん(25):「これはチュチュです。ここに来たばかりなので、こういう形で保管しています。色んな種類、たくさんの色があります」「ドン・キホーテの衣装を紹介します。かなりの輝きです。ここでは分からないかもしれませんが、華々しさがあります。主役キトリの衣装のひとつです。この演目のすべの衣装は、ウクライナから持ち出せたんです」「これは伝統的なウクライナの衣装です。男性用と女性用があります。日本でもキモノに刺繍するそうですね」
バレエ団には、自分たちのルーツを強く出した作品があります。ウクライナの民族的な踊り『ホパーク』です。
パシリエワさん:「ウクライナで起きていること、世界に知らせなければ。私たちは芸術の最前線にいます。このやり方で母国を守っているんです」
国外に避難したバレエ団。今年はバルト三国やドイツなど、15カ国で公演を行ってきました。皆の心は、ウクライナと共にあります。
キーウにあるバレエスクール。「踊ることの楽しさを知ってほしい」そんな想いを受けて、バレエを続けています。
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp
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