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国の無形文化財にも指定されている岩手県の蘇民祭。なかでも、黒石寺のルーツは1000年以上前にさかのぼるとされ、最大規模と言われています。真冬に水をかぶって身を清め、大勢で唱える「ジャッソー」という掛け声は「邪を正する」という意味だと言われています。
祭の参加者は、多い時で4000人ほど。2008年に個性的なポスターが物議をかもしても、コロナ禍でも、多くの人に支えられ、伝統は守られてきました。そんな黒石寺が、来年に決めた、伝統の終わり。信仰に関わる行事は継続するとのことですが、これまでのような激しい祭は見られなくなります。町の各地に飾られる銅像を手掛けた、朝日田泰博さん(79)は…。
朝日田さん:「残念な気がするね。長年やってきたものを、ここで中止というのはもったいない。私はうんと愛着があるんですよ」
終了する主な理由は、日本全国に広がる高齢化です。黒石寺を支える檀家たちは、80代など10組ほど。その中の一人は…。
黒石寺の檀家:「我々は、お薬師様に仕えて祭りをやってる。昔からお精進をやってきて、お薬師様にお仕えしているので、他の人がそこへ入ってきて、精進をしてない人が入ることは、我々は許せないんだということ」
20年、蘇民祭に参加してきた、黒石寺蘇民祭保存協力会青年部の佐々木光仁さん(61)。ポスターに採用されたこともあり、来年から、若手の指導役としてのスタートを切るはずでした。
佐々木さん:「来年から頑張るぞと。しかも、世話人の見習いとして、気持ちを入れてた矢先だったんで、ショックはかなり大きいです。いまだに信じられません。何とかできないかって」
日本全国にある裸祭りの仲間たちと再会を果たす場でもあったといいます。
佐々木さん:「復活できる時を願って待つしかない。全国の仲間とも会えなくなるのかなというのが」
地元からの惜しむ声にもかかわらず、終了を決めた黒石寺の住職。理由をこう語りました。
妙見山黒石寺 藤波大吾住職:「お祭りの内側の重要な核になる部分に、色々な儀式があるが、その部分は代々、この家の人がやるということが決まっている。本当に伝統というところですので、なかなか変えることが難しい」
蘇民祭の“核”とは、祭で取り合う蘇民袋を作るなどの作業。
藤波住職:「外から誰かお手伝いしてくれる若い人に入っていただいて、伝統をつなぐっていう考え方ももちろんあるんですが、お祭りの形が変わることだと考えています」
住職は、祭りの派手な姿を無理して維持するより、信仰の形を守ることを選びました。
藤波住職:「蘇民祭というお祭りは、信仰の一つの形です。極端な話を言ってしまえば、お祭りじゃなくてもいい。必ずしも、みんなで集まって蘇民袋争奪戦をしなければならないわけではない」
1000年を超える歴史に幕。最後に、私たちに投げかけた言葉は…。
藤波住職:「『去年はお世話になりました』『今年もよろしくお願いします』『頑張っていきましょう』という願いとか、誓いを立てるのが信仰の原点。改めて、なんでこの祭りをやるんだっけ。続けたいと思うのはなんでだっけ。考えてみていただけるといいのかな」
◆やめるからこそ守れるモノ
黒石寺では、お祭りとしての開催は最後になりますが、今後は地域のための儀式だけ続けていくということです。
そもそも、蘇民祭は、国の無形民俗文化財に『岩手の蘇民祭』として、1995年に登録されました。2002年の調査では10カ所で開催されていたということです。しかし、現在では、黒石寺に限らず、熊野神社も担い手不足や関係者の高齢化のため、昨年度で終了。胡四王神社では、コロナやインフルエンザへの対応を理由に、今年度を含め4年連続で中止しています。
(Q.その他の場所は、今後も継続していきますか)
継続してく予定ですが、担い手不足や高齢化という課題を抱えています。一方で、何とか継続させようとしているところもあります。例えば、長徳寺(一関市)では、かつて担い手不足などでお祭りを中止して以降、約50年間、祈祷などの儀式のみを行っていましが、10年前に、町興しも兼ねて祭りを復活させました。その際に、若い人も高齢者も参加しやすいように工夫を行いました。時間帯を夜通しから日中に変更。お祭りで使う蘇民袋は、檀家ではなく実行委員が作成。振る舞う料理の簡素化などで負担を小さくしました。
長徳寺 渋谷住職:「信仰が中心にあるのは間違いないが、地域の人が参加してこそ“祭り”。皆が参加しやすいように変化させ、存続させていきたい」
(Q.板倉さんは過去3回、黒石寺の蘇民祭を取材していますが、どう思いますか)
板倉アナウンサー:「当時から、多くの人が集まって盛り上がり、熱もかなり激しいものがありました。すごくにぎわっていただけに、このニュースを聞いた時は『なんで?』というのが率直な感想でした。でも、住職の言葉を聞いて、お祭りに至るまでの伝統的な儀式や信仰心がとても大切なものなんだということを改めて伺って、祭りの在り方を考える機会になりました」
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp
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