大手回転寿司チェーンで利用客による迷惑行為が相次ぎ発覚。SNS上では、醤油のボトルなどを舐め回したり、レーンを流れる寿司に唾液をつけたりする動画が拡散された。
「スシロー」を展開する株式会社あきんどスシローは迷惑行為に対して、「刑事、民事の両面から厳正に対処する」と発表。毅然とした態度を評価する声も多い。
とはいえ、このような迷惑行為は今に始まったことではない。大手回転寿司チェーン店でアルバイト経験のある2人の証言を紹介する。また、今回は飲食店で多発する迷惑行為の法的見解について弁護士に聞いた。
◆4人家族なのに「明らかにお皿の枚数が少なすぎる」
町田未来さん(仮名・30代)は以前、回転寿司店でアルバイトをしていた。そのなかでも、「衝撃的な“セコケチ家族”に遭遇したことがある」という。
「はたから見たら“普通の家族”といった雰囲気で、食事中は特に変わった様子は見られませんでした」
町田さんは、実際にその家族が何皿食べているのかまでは見ていなかった。しかし、会計の際に皿の枚数を数えていると違和感を覚えたのだとか。
◆座席の足元に大量の皿が…
「4人家族で食事したにもかかわらず、お皿の枚数が明らかに少ないと思いました」
よっぽど少食なのだろうか? しかしながら、その家族が食事していたテーブルを片付けていると……。
「座席の足元部分に皿が積み重なっていたんです。5枚ほどの高さが数列ほど並べられており、それは店員が気づきにくいところに置かれてありました」
その後、“セコケチ家族”は平然とした顔で来店したという。
「私は前回の不正を覚えていたので、お客様にはさとられないように食べたお皿の枚数を確認していました。その家族は、またしても座席の下にお皿を置いたんです。そして会計時、正直に『困ります』と言いました。次に発覚した場合には店長に報告する旨を伝えると、非常に不満げな顔をしていましたね」
以後、町田さんがシフトに入っているときにその家族を見かけたことはなかったという。
「印象に残っているのはその家族ですが、ほかにも、空いたお皿がレーンを流れていることが何度かありました。それがどのお客様が食べたものということを証明するのは簡単ではなく、結局、誰がやっていたのかわかりませんでしたね」
このような迷惑客は一定数いるのだろうと町田さんは訴えた。
◆回転レーンから皿を取らずに枝豆をつまみ食いする客
大手回転寿司店でアルバイトをしていた横山勝二さん(仮名・30代)は、夕食時間のピークを過ぎ、一段落したときに出会った迷惑客について話してくれた。
「一人の男性が、カウンター席でビールを飲みながら食事をしていました。よく見ると、回転レーンの皿を取らずに枝豆を2、3個つまみ食いしていたんです」
ほとんどの回転寿司店では、皿の枚数を数えて勘定を行う仕組みになっている。皿を取らない飲食は無銭飲食であり、「その皿を他のお客様が取る可能性を考えると、許せない行為だった」と横山さんは振り返る。
◆セルフサービスのガリを直箸で食べていた…
店舗にいる社員に報告しようとしたのだが、たまたま近くにいなかったため、横山さんは勇気を出して自分で注意することに。すると、さらにとんでもない迷惑行為を発見する。
「セルフサービスで置いてあるガリを、専用のトングを使わずに直箸で取って食べていたんです。ガリは少なくなったら処分せずに補充しており、他のお客様との共有物です。私はモラルに欠けた行為が許せず、感情も高ぶっていました」
横山さんは、この2つの行為に対して注意した。すると……。
「男性客から『なんだその言い方は! おまえアルバイトか! 口のきき方も教育されていないのか!』と強い口調で罵倒されました」
客が激昂する声を聞いた社員が慌ててその場に駆けつけてくれたという。社員が客に事情を聞こうとすると、「気分が悪い、帰る!」と言い放ち、すぐに店を後にしたそうだ(※会計は社員が担当していたので枝豆の代金を支払ったのかどうかは不明)。
横山さんは店側や他の客にも迷惑をかける行為について、強い憤りを感じたという。
◆迷惑行為は「刑事的・民事的にも大きな責任を負うもの」
昨今は、飲食店やコンビニなどで客が過度なサービスを要求して店員を困らせたり、悪質なイタズラを行ったりするなど、迷惑行為の様子がSNSに投稿されて炎上してしまうケースが目立っている。青山北町法律事務所の松本理平氏が警鐘を鳴らす。
「そもそも上記行為は、強要罪、威力業務妨害罪、偽計業務妨害罪、窃盗罪、詐欺罪など多岐にわたる違法行為を構成するため、刑事的・民事的にも大きな責任を負うものです」
◆今まで「厳しい法的措置」が避けられてきた理由
しかしながら、これまで迷惑客が見過ごされ、店側が厳格な法的対応を行ってこなかったのはなぜなのか。
「さまざまな経営判断によるものと思われます。具体的には、①個人への法的な責任追及について、むしろ企業側に“やり過ぎ”だという社会的な批判があがるリスクへの配慮、②被害額が軽微なため、法的対応に掛かる弁護士費用などを考慮すると費用対効果が低い、③現場のアルバイトが固定給のため、余計な争いをして負担を増やさないため、などの理由から厳しい法的措置は避けられてきました。
ただし、最近ではSNS上で“バカッター”や“客テロ”という形で拡散されやすいことや、それを見た模倣犯が多数発生したことにより、迷惑客の存在が社会問題となっています。
ここまでくると、会社として“放置”することは、逆に株主や社会から批判の対象になってしまうリスクがあります。そのため、今後は費用を掛けて弁護士対応をしたり、アルバイト店員へのマニュアルを整備したり、なんらかの対策を講じていく可能性が高いです」
◆「軽い気持ちでやった」という言い訳は通じなくなる
スシローの件をはじめ、迷惑客の行為について法的な責任が広く報じられるようになった。
「迷惑客は厳しい社会的非難を浴びたり、法的責任が追及されるなど、今後は『軽い気持ちでやった』という言い訳は通じなくなると思われます。『面白いことをする』『目立つことをする』ときは、くれぐれも注意してください。そもそも、自分が罰せられるかもしれないから気を付けるのではなく、“人に迷惑をかけないこと”が自由の大前提だということが広く認識されるべきだと思います」
【青山北町法律事務所・松本理平】
慶應義塾大学経済学部経済学科、九州大学法科大学院卒業。複数の都内法律事務所での勤務及び大手金融機関での出向を経て「青山北町法律事務所」設立。芸能関係の案件・男女トラブル・企業法務などを中心に取り扱う。EPP株式会社代表取締役(現任)合同会社 青山北町リサーチ 代表社員(現任)、一般社団法人 探偵協会 理事(現任)、その他コメンテーター等にてメディア露出多数。
<取材・文/chimi86(エピソード部分)、藤井厚年、日刊SPA!取材班>
【chimi86】
2016年よりライター活動を開始。出版社にて書籍コーディネーターなども経験。趣味は読書、ミュージカル、舞台鑑賞、スポーツ観戦、カフェ。
]...以下引用元参照
引用元:https://news.nifty.com//article/magazine/12193-2677606/