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イスラエル人で、世界的に著名な歴史学者であるユヴァル・ノア・ハラリ教授。いま、中東の歴史の転換点を複雑な思いで見つめています。
ユヴァル・ノア・ハラリ教授:「(Q.イスラエル人として、歴史学者として、今回のハマスによる攻撃を、それぞれの立場からどのように受け止めているか)テロリストは意図的に民間人を襲っただけでなく、考えうる最も残虐な方法で拷問・殺害し、それを公開しました。その目的は、イスラエルと地域全体の数百万人の心に、“憎しみの種”を植え付けることでした。主な問題は、過去の傷を癒す代わりに、人々が過去の傷を利用して、さらなる傷を与えることを正当化していることです。未来に目を向け、平和のための方法を見つける必要があります。現時点では、ほぼ不可能に見えますが、長い目で見れば不可能ではないと思います。というのも80年前、ユダヤ人は、ドイツのナチスによって何百万人も虐殺されました。そして、今日、ドイツ人とユダヤ人の関係は良好です」
ただ、歴史学者であり、物事を冷静に分析するハラリ氏も、いまは憎悪で自分を見失いそうになるそうです。
ユヴァル・ノア・ハラリ教授:「私自身の家族や友人に深く影響を及ぼし、ひどい苦しみを与え続けている問題であるため、現時点で私は客観的になることができません。この“苦しみの海”にのまれている人々は、他人の苦しみと共感することができなくなってしまうのです」
それ故に、未来を左右するのは、イスラエル人でも、パレスチナ人でもない、第三者の言動だと強調しました。
ユヴァル・ノア・ハラリ教授:「このインタビューを見ている人にも、パレスチナ人などの異なる視点の人々とのインタビューも見てほしいです。ただし、信用できる情報には注意して、結論を急がないようにしてほしいです。被害者か加害者の二択で考えがちですが、歴史において、そんなことはほとんどありません。被害者と加害者が同じであることがほとんどです。どちらかが『絶対的な正義』で、もう片方が『絶対悪』だと思い込まないようにすべきです。『絶対的な正義』を探し求める人は、必然的に争いへ導かれてしまいます。なぜなら、どんな譲歩もできなくなってしまうからです。残念ながら10年以上にわたり、ネタニヤフ政権は、パレスチナと真の平和を築く努力を怠ってきた。ネタニヤフ政権は、イスラエルの占領に関して、ますます過激な立ち位置をとるようになり、時に、はパレスチナに対して、人種差別的な世界観を選んでいて、それは大きな間違いでした。今、世界では、多くの人が壁や境界線をつくる必要性を語っている。思考と口の間にも壁を作らなければなりません。頭に浮かぶ考えや感情はコントロールできない。しかし、口から発するものはコントロールできる。何を言うか、書くか、するかに関しては責任をもつべきです」
最悪の事態を迎えそうな今、大事なのは、心にスペースを持つこと。当事者たちには、できないことだからです。
ユヴァル・ノア・ハラリ教授:「(Q.日本からできることはあるか)日本ができるのは政治・経済・文化の力を利用して、紛争の悪化と戦火の拡大、エスカレーションを防ぐことでしょう。あとは、苦しむ人たちに支援物資を送ることです。一番重要なのは、平和のための“スペース”を取っておくことでしょう。痛みについて語るにしても、イスラエルのことでなければ頭にくるんです。『私たちが感じる激しい痛みを知らずに、なぜパレスチナなのか』と。こうした状況では、心に平和のための“スペース”がありません。“苦痛の海”につかりきりの私たちでは、今、心に抱くことのできない平和な空間を皆さんに捧げます。だから皆さんで使ってください。いつか、私たちが、その平和の“スペース”に暮らすことになりますから」
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp
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