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【報ステ】頼みのエジプト検問所開かず「治安悪化と経済的に難しい」ガザ住民の苦難(2023年10月16日)

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イスラム組織『ハマス』とイスラエル軍の衝突による双方の死者は4100人を超えました。

アメリカのブリンケン長官が16日に再びイスエルを訪問しました。この5日間で2回目です。

ブリンケン国務長官は、13日はPLO=パレスチナ解放機構のアッバス議長と会い、その後は、サウジアラビアでムハンマド皇太子と、そして、エジプト・シシ大統領らと会談を行いました。アメリカが行う軍事支援について説明をしたものとみられます。
アメリカNSC・カービー戦略広報調整官:「イランであれ、ヒズボラのようなテロ組織であれ、紛争を拡大させ、イスラエル軍をかく乱するために新たな戦線を作らせてはいけない。空母アイゼンハワーを母艦とした2つ目の打撃群を派遣したのも地中海東部で抑止行動をとるためです」

一方、ハマスの指導者・ハニヤ氏は、イランの外相と会談し、協力し合うことを確認しました。
イラン・アブドラヒアン外相:「ガザ地区での残虐行為をやめなければ、イランは傍観者ではいられなくなる」

また、イランと関係の深いシーア派組織『ヒズボラ』も、イスラエル軍と散発的な戦闘を始めています。

アメリカの動きは、流動化する地域の動きを見据え、こうした勢力の抑え込みを目的としているようです。ただ、バイデン大統領は、このようにも話しています。
アメリカ・バイデン大統領:「イスラエルが、再び、ガザを占領するのは間違いだ。パレスチナ国家樹立への道は残すべきです」

イスラエルのネタニヤフ首相は15日、戦時内閣発足後、初の閣議を開きました。
イスラエル・ネタニヤフ首相:「我々に向かってくる血まみれの怪物を根絶させる準備は、すでにできている」

イスラエル南部、ガザ地区から10キロほどの場所では、世界一の防御力ともいわれている戦車『メルカバ』、歩兵を運ぶ装甲車、そして、工兵部隊の物と思われる装備が確認できました。

空軍と海軍でも、それぞれSNSでの動画公開を活発化させていて、臨戦態勢であることを隠そうとはしていません。

ガザ地区北部への空爆は、相変わらず続けられています。北部で街を衛星で撮影した画像を見ると、ワンブロックすべてが空爆によって、ガレキだけになっていました。そこには、ハマスの掘ったトンネルが関係していそうです。
イスラエル・ガラント国防相:「我々は、テロ活動を行うすべての基地、すべてのトンネルにたどり着く。すべてのハマスの活動拠点を見つけ出してせん滅するまで、この作戦の完遂はない」

イスラエル軍が公表した全長500キロにも及ぶハマスのトンネル。避難勧告の出ている北部に多くあります。イスラエル側に
通じていたものは、すでに破壊したそうですが、地下30メートルに掘られたトンネルを破壊するのは、容易ではありません。

今回の衝突で、イスラエル側に出た死者数は、少なくとも1400人。ハマスに捕らえられた人質は199人。ガザ地区での死者は
2750人です。

16日、本来なら、ガザの状況が一歩進展するとみられていた日です。ガザとエジプト境界にある検問所が初めて開放され、外国人の退避や、支援物資の搬入が行われるという見方がされていました。

ところが、検問所は開放れませんでした。当事国の間で何が起きているのか、理由は不明ですが、検問所の外側に列をなした支援物資のトラックは、いまだ中に入れない状況が続いています。

退避通告が出されたガザ北部。いまだ50万人ほどがとどまっているとみられます。

すでにガザ全体の死者数は、50日間に及んだ9年前の地上侵攻での死者の数を上回っています。ここに地上侵攻が行われれば、過去にも例がない規模の被害につながりかねません。

それでも、とどまる決断をした人々がいます。ガザ北部にある小児病院の医師。
小児病院の医師:「子どもたちは人工呼吸器によって、辛うじて生命をつないでいる状態です。なので、彼らを移動することは不可能です。逆に大きなリスクを伴います。たとえ殺されようとも、我々は医療に従事し、ここを離れません。狂気の沙汰です。大変、厳しい状況です。ここから子どもたちを退避させないということは、死刑宣告をされるようなものです」

一方で、退避も命がけです。
CNNによりますと、退避ルートに設定された道路で爆発が起き、子どもを含む複数人の遺体が確認されたといいます。退避通告を出してからの3日間、こうしたケースが相次いでいます。

彼らが目指すガザ南部も、危機的状況なのは変わりません。ガザで2番目に大きい病院。集中治療室にいるほとんどが子どもですが、発電機の燃料があと数時間で尽きる予想です。
ナッサール病院・カンディール医師:「ICU患者や透析患者は死亡する危険があります。そうなれば、新たな戦争犯罪の悲劇として歴史に残るでしょう」

現地で尽きかけているのは、生きていくうえで必要なもの、すべてです。残りわずかの食料に市民が殺到。小さなガソリンスタンドには人だかりができ、街の至る所に、水を求める住民が列を作っています。

イスラエルの発表では、ガザ北部から60万人が南部に退避済みだといいます。いまガザ南部にいる住民は100万人以上に膨らんでいる可能性があります。いますぐ物資が届かなければ、この膨大な数の命が脅かされることになりかねないのです。

北部で難民支援を行なってきたNGOも活動停止。現地スタッフとの連絡もままならない状況だそうです。
JVCエルサレム事務所・木村万里子現地代表:「こちらがメッセージを送っても、すぐに返事が返ってくることはほとんどない。“既読”が付いたら電波が通じている、電源がある状況だと察知をして、つながるなら、そのまま電話したり、チャットでやり取りしたり。ほぼ『大丈夫』って安否確認だけで精一杯」

※パレスチナ情勢に詳しい防衛大学校江崎智絵准教授に聞きます。

イスラエル軍はガザ地区に対して退避勧告を出し、リミットを設けましたが、大規模な地上侵攻は見られず、引き続き、退去通告を続けています。

(Q.イスラエル軍はタイムリミットを過ぎる度に、期間を設けなおしているのはどういう考えがあるのでしょうか)
60万人が南部に避難したとありました。イスラエル軍は、パレスチナ人の退避について「これは軍事作戦をするスペースを設けるためだ」と言っています。人質の奪還のためにも、地上侵攻は大前提ということで、いかに軍事行動をしやすくするかということが最優先されているように思われます。また、そうすることで「自分たちはやるだけのことはやった」と国際的な批判を回避しようという考えがあるのではないかと思います。何かあれば、ハマスに責任の所在を求められるというような環境作りだと思います。

(Q.人質救出のため、どんなことを考えていると思いますか)
彼らがどこにいるのか。軍事作戦を行ううえで、一番、重視していると思います。ハマスは「安全なトンネルにいる」などと言っていますが、こうした情報をイスラエルは、ガザ地区の上空にバルーンのような機器を浮かせて、そこからカメラを通じて情報を得ています。

(Q.中東の各国をブリンケン国務長官が訪問しています。人質の中にアメリカ人も含まれていますが、アメリカの狙いはどういうところにあるのでしょうか)
自国民が人質になっていて、人質の解放に向けて動くとともに、テロに対する断固たる姿勢を打ち出すということだと思います。9・11以降、アメリカが打ち出したテロとの闘い。そういった文脈の中にも位置づけているのだと思います。アメリカは、空母の派遣もしていますが、これは戦況のエスカレーションを抑止するというような意味合いもあるのではないかと考えます。現在、イスラエル北部の方は、レバノン南部のヒズボラからのミサイル攻撃によって状況が悪化しているといわれています。ヒズボラの支援国であるイランが、ヒズボラを動かして、戦況を拡大しようとするような意図を事前に阻止したいということも考えられると思います。

ガザとエジプトの国境、ラファの検問所。人の出入りはまだ認められていないため、ガザ地区の住民が検問所の前に詰めかけています。こうした住民の今後の行方のカギを握るのがエジプトです。エジプトは、ガザでの人道危機に対処するため、支援物資の搬入には前向きなものの、人の受け入れには慎重な姿勢を崩していません。エジプトのシシ大統領も12日に「パレスチナ人は自分たちの土地にとどまり続けるべきだ。彼らを受け入れてしまえば、(国家樹立という)パレスチナの大義が失われる」と発言しています。

(Q.エジプト側の立場、思惑はどうなのでしょうか)
シシ大統領が「国家樹立という意味でのアラブの大義」という発言しましたが、国家の樹立、すなわちパレスチナ独立国家ということであれば、国際社会が支持している二国家構想、イスラエルとパレスチナの和平案に合致するものです。エジプトは、非常に原則的な立場を、改めて、国際社会に突き付けたということが理解できるかと思います。一方、この人道危機の最中に困っている人を出さないというのは、エジプトとして、かつてガザ地区からテロリストが入って治安が悪化した事情もありますし、パレスチナ人を受け入れる経済的なコストなども勘案して、正直なところ、受け入れは非常に難しいという立場の裏返しでもあろうかと思います。

(Q.非常に多くの国の思惑が関わってきているが、落としどころはあるのでしょうか)
非常に難しいですが、イスラエルが、今回、人質の奪還とハマスのせん滅を目標に掲げています。地上戦を行うのであれば、人質を奪還することが最優先だと思います。少なくとも人質を奪還するまでは、地上戦は続くという見通しはできるかと思います。その後、ハマスのせん滅ですが、何をもっていうかですが、これは戦時内閣の政治的な判断になろうかと思います。例えば、戦況が長引き、ラファを開けず人をとどめ置くということになれば、批判は高まっていきます。そういったコストを近隣諸国がどこまで受け入れられるのか。そこから、例えば、ハマスなりイスラエルに圧力をかけることができれば停戦、停戦協議に近付くことかもしれないと考えます。
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp

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