【本ページはプロモーションが含まれています】

炎上

ビッグモーター社員6000人はなぜ不正を黙っていたのか…「奴隷社員」を生むブラック組織の共通点|ニフティニュース


ブログランキングに投票お願いいたします。

[

■深刻なのは「制度面の不備」より「従業員のマインド」

中古車販売大手ビッグモーターの保険金不正請求をめぐり、経営陣によるガバナンスの問題が露呈している。「天地神明に誓って知りませんでした」とする兼重宏行前社長の記者会見での発言は責任逃れと批判され、幹部の言うことを聞かなければ即降格という、恐怖政治が横行する経営体制は悪質というほかない。

私は勤めていたブラック企業を不当に解雇され、2年近く裁判で争ったことがある。そこでは、営業成績不良や勤務態度不良の注意指導と称して上司に胸ぐらを掴まれるなんてことはザラだったし、草むしりやトイレ掃除などの懲罰的なパワハラもあった。

こうした経験からすると、ビッグモーターを批判する人々やメディアは「少し的外れな議論をしているな」というのが正直な感想である。批判の多くは同社の制度面での不備ばかりで、従業員のマインドの問題にほとんど関心が向いていないからだ。

ビッグモーターを調査した第三者委員会の報告書によると、保険金の不正請求は5年以上前から全国的に行われていたという。それなのになぜ、これほど問題が大きくなるまで不正は明るみに出なかったのか。

■同調圧力はさまざまな要因から生まれる

劣悪な労働環境で働いていた「ブラック労働者」は一般的な感覚と大きく異なる価値観を持っている。おそらくビッグモーターの社員は、ブラック体質に洗脳されていたのではないか。

現に元幹部を名乗る人物はYouTubeで同社を「ゴリゴリの営業会社(中小企業)がそのままでかくなった感じ」と発言しており、同社に歪な労働信仰の高さがあったことがうかがえる。

ブラック企業の恐ろしいところは、なんといっても同調圧力だ。「ウチの会社はこうだから」「業界の常識だから」という空気が職場に蔓延すると抵抗するのはほぼ不可能。自分で自分を騙し、心を殺さなければやっていられなくなり「社畜」が大量発生する。そこには早期転職はキャリアの傷になるという恐怖、お金、プライドといった複合的な要因も絡んでいる。

もちろん従業員だけでなく、ブラック企業は経営陣も黒色に染まっている。好例を示そう。

私は勤務時間外に仕事の電話に対応しないから、つまりサービス残業をしないからという理由で解雇通知書を渡された。解雇に納得できなかった私は代表取締役に「助けてください」という内容のメールを送った。

■「悪事をもみ消す自浄作用」が働いている

後日、このような返信があった。

代表自らが違法労働を示唆、容認する内容を読んだ時、私は「この会社ダメかもしれない」と悟った。案の定、解雇は撤回されず、そのまま裁判に突入。2年間にも及ぶ法廷紛争を繰り広げた。

ちなみに、裁判前に所属していた会社の親会社(上場企業)へも解雇撤回と違法労働の是正を求めたのだが、監査役からは「調査したけどわからなかった。納得できないのなら裁判で確認されたらどうですか?」と口頭で言われたことがある。つまり、やれるもんならやってみろ、というわけだ。裁判は結果的に会社が折れ、4000万円で和解した。

ビッグモーターの経営体制をめぐっては、非上場のためガバナンスが緩かったという指摘が頻繁にされている。たしかにそういった側面もあるかもしれないが、ブラック企業の最前線にいた身からすれば上場云々は関係なく、ブラック企業という生き物そのものに「悪事をもみ消す自浄作用」が働いているように感じてしまう。

〈求人サイト上はホワイトだが…勤め先から4700万円を勝ち取った男が教える「隠れブラック企業」3つの特徴〉でも述べたが、労働問題が起きるような企業は、社内ホウレンソウが正常に機能していない。それどころか、歪曲(わいきょく)した情報が出荷される可能性が高い。

■減給を伴う降格は法的に認められない可能性が高い

なぜならサラリーマンが大切にしているのは、極論、会社ではなく自分だからだ。自分が不利になったり責任を問われたりするような報告をわざわざする必要がどこにあるだろうか。隠蔽(いんぺい)できる可能性があるなら、そっちに流される社員が現れても何ら不思議ではない。降格などの懲罰が横行しているのなら尚更だろう。

見方を変えるなら、お金の誘惑に負けて現場社員が不正に走ったとも解釈できる。だからといって、降格などの制度面だけに責任転嫁する論調は間違っていると私は考えている。実際に手を下したのは現場社員であり、生活のため家族のためなどは、取引先やお客からすれば何の言い訳にもならない。

同調圧力の根にある「教育の問題」については〈なぜ「権利を使う人間」を叩くのか…不当解雇で計4700万円を勝ち取った私を「当たり屋」と呼ぶ日本人の闇〉で詳しく述べた。また、この記事で私は「会社と戦うことに関する情報不足」を指摘している。言い換えるなら、日本の労働者は労務に関する知識があまりに足りない。

ビッグモーターの問題も同じで、例えば懲戒処分ではない減給を伴う降格は、法的に認められない可能性が高い。よって恐怖政治を振りかざされても委縮する必要はなく、ましてやゴルフボールで顧客の車に傷をつけるなどという一線を超えた行為には堂々と「それは間違っていると思います」と会社に盾突けばよい。

■思考停止した「奴隷」が溢れている

しかし、日本人はこれが苦手だ。在職するなら会社に従うべきで、嫌なら転職すべきといった二者択一に悩む傾向がある。嫌々ながらも流されているうちに、組織と戦うための牙を完全に抜かれてしまう。会社への信頼や忠誠心、あるいは協調性が高いといえば聞こえはいいが、炎上覚悟で表現すると、ビッグモーターには思考停止した「奴隷」が溢(あふ)れているように見える。

さらには、私のように不当解雇した会社を訴え、多額の和解金を得た人間は「訴えずにとっとと辞めろ」「お前の和解金は一生懸命働いている従業員の努力から支払われている」「こんな奴と一緒に働きたくない」と言われる始末。権利を主張する人を叩く「社畜」が多いからこそブラック行為は常態化するし、長年明るみに出ない。このままでは第2、第3のビッグモーターが現れるのは時間の問題ではないだろうか。

組織的な隠蔽体質は、なにも同社に限った話ではない。私が訴えた会社も、私の在職中、ある社員が取引先に対する不正行為に走ったことがある。

具体的には大型トラックで工場向けの軟水(※商品名は例えであり、実際は水ではない)を運んでいた。工場の在庫が尽きそうだとの報告を受け、近場に居たトラックが運んでいた硬水を軟水と偽って納品した。後日、勇気ある者からの内部告発により事件が発覚し、品質の異なる商品を納入された工場側は激怒。取引停止も視野に入れた大問題に発展した。

■報告を聞いて真っ青になった所長の一言

業務に精通しているという理由で私が不正事件の調査を担当することになった。そして、やはりと言うべきか、過去に何度も不正を働いた証拠が出てきた。私は所長へ事実通りに報告を上げた。所長は顔を真っ青にしながら言った。

「こんな報告、会社にも工場側へもできない。不正は1回だけだったことにして、その他は隠すぞ!」

このとき所長は、部下の責任問題を問われていた。降格の話も出ていたらしい。よって隠蔽に走ろうとする所長の気持ちは理解できる。が、それだと私も共謀になってしまうので、私は所長代理に所長の言動を含めて報告を上げた。

所長代理から「後は任せてほしい」という発言を得た私は、後は役職者だけでよろしくといったスタンスで本件調査から手を引いた。そしてこの事件から2年が過ぎた頃に解雇通知書を渡された。ちなみに所長は所長のまま働き続け、責任を取らされることはなかった。

運送業に限らず、どの業種どの会社どの個人も、大なり小なり「まぁこれくらいならいっか」と不正に手を染めたことがあるのではないだろうか。それが明るみに出るか、仮に出たとしても取り上げられるかは運次第といったところか。その運をブラック企業が引き寄せない要因の一つとして「人材流動の激しさ」があると私は考えている。

■戦わず「辞める」がスタンダードになっている

前述した私の会社では、不正に関与した社員も調査に乗り出した私もすでに退職している。そして、不正を隠蔽した役職者だけが残っている。ブラック企業の離職率が高いことは周知の事実だ。

ビッグモーターでも従業員約6000人のうち、2023年1月〜3月の間に約1000人が退社したという(日刊自動車新聞、7月20日付)。同社は前年に水増し請求が発覚したことを受けて特別調査委員会を設定しており、長年の不平と不満が爆発した社員による退職ラッシュが起きたとみられる。

しかし、一人また一人と辞めていく環境だからこそ、問題意識を持った社員同士で結託することは難しい。なぜなら「戦う」ではなく「辞める」がスタンダードモデルになるからだ。

また同社では転勤や異動が頻繁にあったと聞く。長く勤めていない、あるいは職場での深い人間関係が構築されてない場合、会社を良くするよりも会社に見切りを付けて転職したほうが楽だと考える傾向も強まるのではないか。結果、今回のビッグモーターのように外部からの大きな圧力がかからない限り、不正を是正するチャンスが来ないのではないか。

ビッグモーターでは、すでに退職した社員からの告発が今になって相次いでいるようだが、これは「数の力が生み出す押せ押せムード」がいかに重要かを裏付けている。

■制度改革以上に労働者の意識改革が必要

労働問題がクローズアップされる時、制度設計の議論ばかりが熱を帯びる。ガバナンスや解雇の規制緩和、残業上限や有給取得などの議論が好例だろう。だが、そもそも万人が納得できる制度設計などできるのだろうか? ルールの穴を突く、あるいはルールそのものを上手に活用する企業や労働者は必ず現れるだろう。労使のいたちごっこに終わりはない。

制度改革に意味がないと言っているわけではない。私が伝えたいのは、制度改革だけでなく労働者の意識改革にも重点を置いた議論をもっとさかんにしてもよいのではないか、という一つの提案、一つの可能性の提示だ。いつ完成するかもわからない制度改革に期待するより、自分の行動や考え方を変えるほうが手っ取り早いし確実である。

ビッグモーターの報道で私が感じているモヤモヤはここにある。制度面の不備ばかりに注目が集まり、意識面の問題にまったくと言っていいほど関心が向いていない。

恵まれた環境下でしか働いたことのない有識者が表層的な問題点のみを指摘し、解決した気分になっても意味がない。二度と同じような過ちを繰り返さないためにも、事件の根の根にある問題にまでメディアの関心が向くことを願う。そして、ゼロから議論を組み立てる必要があるのではないかと思う。

----------
佐藤 大輝(さとう・だいき)
ブラック企業元社員
23歳の時、不当解雇されたブラック企業を訴え、20カ月間争った後、和解金700万円を獲得。29歳の時、不当解雇されたグレー企業を訴え、24カ月間争った後、和解金4000万円を獲得。神戸市在住の現在32歳。趣味は読書、バドミントン、海外渡航。これまでにバッグ一つで世界25カ国を旅した。ビジネス書と小説、どちらもベストセラー書籍を出版するのが夢。
----------

(ブラック企業元社員 佐藤 大輝)

]...以下引用元参照
引用元:https://news.nifty.com//article/magazine/12179-2502054/

-炎上

炎上リサーチ ワールドカップもね
Translate »