正社員の送別会に、幹事が職場の派遣女性たちを呼んだのはいいとして、彼女たちの「子どもを連れて行ってもよいか」という頼みにOKを出してしまった。
さあ、大変だ。子どもたちの飲食費は正社員が出さなければならない。「腹が立つ。出したくない」という男性の投稿に「図々しい」「非常識」と派遣女性を非難する声。
一方、「うちの会社でも子連れOK」「もっと大らかに」と派遣女性を擁護する声も。専門家に聞くと――。
■派遣女性の6割、「気を使う」「面倒」と会社のイベントに出たくない
<「社員の送別会に子連れ、タダ食いの派遣女性ってアリ?」正社員男性の怒りの投稿が炎上! 非常識で図々しい?よくある話で大らかに?...専門家に聞いた(1)>の続きです。
――たしかに、送られるほうの人数が多いという珍しいケースですね。ところで、論争の背景には「会社の宴会に、子連れはアリか?」「派遣社員を正社員の送別会に呼ぶのはどうなのか?」といった「会社の宴会のあり方」に関するさまざまな問題がひそんでいます。
川上さんが、研究顧問をされている働く女性の本音を調べる「しゅふJOB総研」が、こうしたテーマにふさわしい調査をしたことがありますか。
川上敬太郎さん「雇用形態には正社員やパート、契約社員などさまざまな種類がありますが、大きくは正社員とそれ以外の非正規社員に大別されます。派遣社員も非正規社員の一種です。
『しゅふJOB総研』では、非正規社員として働いている人が多い主婦層に、職場の同僚と花見をしたいかを尋ねたことがあります。
◇働く主婦の花見事情
すると、『花見をしたいと思う』という人が3割強に対し、『思わない』という人が6割強と2倍近くでした。思わない理由として、フリーコメントには『職場の人間関係による』『仕事とプライベートは分けたい』『パートなど立場の違いもあり、気を使う』『面倒くさい』といった声が寄せられました。
会社で行われる飲み会に対するスタンスは人それぞれで、積極的ではない人もたくさんいます」
■男性は彼女たちの「図々しさ」に怒っているか、それとも...
――今回、圧倒的に多くの人が、2人の派遣社員が『子どもを連れて行っていいですか?』と幹事に言い、子どもたちにタダで料理を食べさせようとしていることについて、「厚かましい」「図々しい」「子どもは宴会の邪魔になるし、子どもの健康にも悪いのに」と激しく批判をしています。
川上敬太郎さん「もし、派遣社員の方々が本当は参加を断りたいのに出席せざるを得ない状況と感じているのであれば、厚かましいといった批判は当たらないと思います。ただ、投稿者さんは『飲み会に参加することが大好き』な人たちだと言っているので、ご本人たちは積極的に参加を望んでいるのかもしれません。
一方で、今回の送別会は送別される側の人数が多く、送り出す側の金銭的負担がかなり重くなっています。そこに派遣社員の方々が参加するとなれば、その分ほか社員の負担はさらに増えることになります。
さらにお子さんも参加するとなると、その分も上乗せされる場合、派遣社員の方々がそれらの事情を承知で参加を希望しているのだとしたら、感情的な反発を受け、厚かましいと批判する声が出てきても不思議ではないと感じます」
■難しい送別会、だれも幹事の相談に乗ってあげなかった...
――そうですよね。一方、派遣社員も図々しいが、もっと悪いのは「彼女たちの非常識を許した優柔不断な幹事だ」という批判がとても多かったです。
また、カキコミによれば、正社員8人の職場から5人が異動するからといって、残り3人の正社員に多くの負担を強いる会費の分け方にも疑問の声があがりました。男性は1万4000円も負担する羽目になりそうになったわけですから、幹事の手際の悪さが混乱に拍車をかけたと......。
川上敬太郎さん「投稿内容を拝見する限りは、たしかに幹事さんは配慮が足りないように感じます。これまでの慣例にならって、そのまま杓子定規に金銭負担するかたちにしてしまうと、送り出す3人の社員の負担が大きくなりすぎることはすぐにわかるはずです。
実際に、投稿者さんは強い反発を感じて幹事に不参加を表明しました。送別される5人の社員も、不穏な感情が渦巻いた送別会に参加するのは気が引けそうですし、自分たちのせいで迷惑をかけたと、逆に恐縮してしまうかもしれません。
一方で、幹事は大変な役割です。今回は送別対象者が5人もいるという難しい状況なだけに、誰か幹事さんの相談に乗ってあげる人がいなかったのかとも思います」
■そもそも飲み会や朝礼がイヤで、正社員を拒否する人が多い
――「子どもを連れて行ってもよいか」と聞いた、派遣社員には擁護論も多くあります。「正社員を送る会に出なくないので、断る口実として、子どもの面倒を見なくてはならないから」と強調したつもりなのに、幹事が了承してしまったのでは、という意見です。
川上敬太郎さん「派遣社員の中には、そもそも飲み会や朝礼、全体の掃除などに参加するのがイヤで、あえて正社員ではなく、派遣という働き方を選んでいる人が少なくありません。
『子どもを連れて行ってもよいか』と聞いたのは断る口実だった可能性もあると思います。ただ、先ほども言いましたが、投稿者さんは派遣社員の方々を『飲み会に参加することが大好き』な人たちだと言っているので、実際はどうだったのかは、投稿内容からだけでは判断が難しいと思います」
――面白いケースを紹介する回答もありました。あるネット掲示板で、会社の集まりの参加条件として、「子ども・ペット・認知症の祖父母&両親の参加はNG」という項目があったということです。
補足しておくと、認知症のことを持ちだしたのは、「預けられない子どもの参加をOKにするなら、面倒をみなければならない認知症の母もいいですよね」という意見があり、大いに議論が盛り上がったということです。
川上敬太郎さん「お子さんを連れていくことの是非は、その職場の雰囲気や参加するメンバーの考え方などによっても変わってくるのだと思います。気兼ねなく大いにお酒を飲んでくつろいで楽しめる雰囲気を優先したい人の中には、子どもがいると気を使ってしまって存分に楽しめないと感じてしまう人もいるかもしれません。
また、皆お酒が入りますし、夜遅くなる可能性もあるだけに、子どもにとってよい環境とは言い難いところもあります。
一方、お子さんを連れて行かないと参加できない環境の社員にとっては、子ども連れNGを打ち出せば、暗に『あなたは来ないで』と言われているように感じる可能性があります。その点、誰もが参加しやすい雰囲気を重視したい場合は、子ども連れOKにしたほうが参加しやすくなるはずです」
■会費に差をつけるのは「派遣差別」「女性差別」「男性差別」?
――まあ、認知症の父母やペットの場合は、子どもよりもいろいろと難しい問題がありそうですね。
ところで、大企業の経験者などから、「飲み会に子どもOKはよくある」という指摘や、「子ども連れのことで目くじらを立てずに、もっと大らかになってほしい」という意見が目につきました。
川上敬太郎さん「派遣社員の方々がお子さんを連れて飲み会に参加すること自体に目くじらを立てているのだとしたら、器量が狭い印象を受ける人もいると思います。しかし、今回のケースについては、そもそも投稿者さんを含む送り出す側の金銭負担が大きすぎることが問題だと感じます。
ただでさえ、送別される側の人数が多くて持ち出しが多いのに、さらに派遣社員の方々が子ども連れで参加して、その分の飲み代も半分以上を負担しなければならない事情を踏まえると、投稿者さんが不満を持つのも致し方ないように感じます」
――そのことに関連しますが、会社の飲み会に派遣社員を呼ぶ・呼ばない、と区別したり、正社員と派遣社員の間で会費に差をつけたり、また、男性のほうが女性より額が多かったりするのは、イマドキ不公平、不平等であり、「派遣差別」や「女性差別」、あるいは「男性差別」にあたるのでは、という意見がかなりありました。
川上敬太郎さん「会費に差をつけることがよくないかどうかについては、一概には言えないと思います。ただ、雇用形態の違いによって飲み会の場に呼ぶか、呼ばないかという話と、会費に差をつける話は分けて考えたほうがいいのではないでしょうか。
本来、職場では雇用形態に関わらず、みんな同じ目的に向かって仕事に従事する仲間です。その点を踏まえると、飲み会に呼ぶか、呼ばないかは雇用形態で区別されるべきものではないと思います。
一方、会費については、人によって収入額が異なるだけに、差をつけたほうが納得感が得られる場合もあります。実際、管理職は多めに出すという職場は少なくないはずです。投稿者さんの職場でも、派遣社員の方々の会費が抑えられているのは、収入額の差からくる配慮なのだと思います。
しかし、今回のケースは、ただでさえ投稿者さんたちの金銭負担が多くなっている状況だけに、通常とは異なる配慮があってもよさそうに思います」
このあとも、川上さんのアドバイスが白熱します――。<「社員の送別会に子連れ、タダ食いの派遣女性ってアリ?」正社員男性の怒りの投稿が炎上! 非常識で図々しい?よくある話で大らかに?...専門家に聞いた(3)>にまだまだ続きます。
(福田和郎)
]...以下引用元参照
引用元:https://news.nifty.com//article/economy/business/12318-2445185/